第3話 裏切りと崩壊
それは二学期デビューと呼ぶにはラジカルな変化だった。
夏休み明け、最初の登校日、教室に工藤が入ってきたとき、彼女は男子の制服に身を包んでいた。
担任の先生が教室に入ってきてもざわつきはおさまらなかった。
「えー、知っている人もいると思うが、工藤は夏休み中、鍵を拾った。これから彼女は男として生きていくことになる。みんな多少は動揺するだろうが、実はまれにあることなんだ。だからやさしく受け入れてやってくれ」
それからの彼女は今まで失っていた輝きを取り返す勢いで明るくなっていった。
男子のグループに属し、みんなが工藤を男子としてみることが当たり前になる。最悪なことにヤエちゃんと鍵と箱を預け合ったという噂までついに耳にした。
再び、ひとりぼっちは僕だけになった。一人で味わう孤独に押しつぶされ、死ぬことばかり考えるようになった。
てっぺんまで達した劣等感で自分の欲求もおかしくなる。鍵を見つめる時間が増え、鍵を舐め回す癖もついた。
特に妄想は激しくなった。それは、理想の女の子を創り上げて、イマジナリーフレンドになって鍵と箱を預け合うことから始まった。クラスでかわいい女の子をモデルにした妄想をノートに書いたりもした。さらには工藤のように自分が女子になった想像なんかもして、目の前に箱があるような錯覚に陥ったこともある。
僕は次第に妄想をできるだけリアルに描写するようになり、一種の小説のような形式で書いたりもするようになった。
それを書きとめたノートが家族に見つかった。僕は町内会議という名の裁判にかけられることになる。
もうおしまいだ・・・・・・。
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