第5話 マイコロニー

暴動が静まり数時間。

残りの警備兵をすべて倒し、ディオは1人、夜を映し出すコロニー内で黄昏ていた。

「えーっと。とりあえず政府軍は倒したが…」

「なんでしょう」

「いや、ここ、どーする?」

政府軍が消えた今、このコロニーは自給自足こそできるように作られているが、政府がいなくてはいずれ治安の悪化が訪れる。インフラの整備などをすべて民間が管理するなどありえない。

「いや、そもそもこんな事をしたのは俺らだし…それに残った戦闘機や残骸、ベースシップの修理も出来るし、ここを乗っ取って使うってのは…」

「ダメです」

「だよなぁ…」

ディオは、このコロニーをめちゃくちゃにした事に責任を感じていた。

「いや、絶対ここをなんとかしなくちゃな。」

「どうにかって、どうするつもりですか?」

「一旦ベースシップに戻るか」

彼らの会話に出てくるベースシップとは宇宙船の1つで、小型でありながら空母の様な機能を持っている。


ここは宇宙港。そこに、歪に歪んだ空間があった。空間が開き、そこから金属製の部屋が見える。ステルス迷彩で隠されているらしい。

「到着を確認しました。ディオ」

「おう。ただいまアリス」

そこにいる女性 いや、女性の人格を持った機械は、かなり特殊な形をしていた。

下半身は女性型の市販品だが、上半身にはたくさんのプラグとサブアームが付いていた。

頭部に至っては美少女の仮面を被り、目の部分の穴から四角いカメラをのぞかせていた。

「Ada、現状をアリスに教えてやれ」

「了解」

そう言うと、ディオの顔用のバイザーに青いラインが走る。

「データを受信しました。厄介な事になりましたね」

「ディオがめちゃくちゃな事をしでかしたせいです」

「状況が状況だ。大目に見てくれ」

アリスは呆れた時の為のテンプレート音声を放ち、3Dプリンターから何かを持ってきた

「ディオ、これが新造された顔です」

「おお、なかなかハンサムだな。俺向きだ」

そう言うとディオは顔を外し、ゴミ箱へ投げ捨てた。フェイススキンの外れた顔は、ツインアイの光と人工骨格で不気味な顔をしている。

新しい顔をつけながらディオは言った。

「これから市民に対して演説をして、このコロニーを占拠する」

「正気ですか」

「残念ながらディオは正気です。」

「と言う訳だ。頼んだぞ」

それを聞くと、アリスは呆れる仕草を見せたが、その割にテキパキと作業を開始した。

プラグを大型端末に繋ぎ、機器制御モードに入る。すると、壁に配置されていた人形たちが動き出す。コロニー用警備兵のガララスから無駄な装甲をとっぱらったそれらは、フレームに赤、青、黄、緑、白のそれぞれの塗装をされていた。

「よしアリス、これからコロニーの復旧作業と自動統治プログラムとガララスの残骸用の警備人格プログラムを書いて、ガララスも修理して…まぁやることは多い。急で悪いが頑張り時だ。」

歪んだ空間から、カラフルな物体が出ていく。その後には、カラフルな物体にも劣らない珍しい形のフレームの男が出てくる。

カラフルな物体ー「ベースシップ用簡易作業機 ドライバー」。かれらのスピーカーから、コロニーホールへの集合時間を伝える音声が流れる。各々の家に帰り、自分が事件に巻き込まれないよう怯えていた人たちも、事態を把握し、暴動が終わった安堵と、これからの不安を抱えながら窓の外の奇天烈集団を見つめる。

そしてその時ー

コロニー内の演説や、重要な情報を知らせるための場所、コロニーホールにて、老若男女、様々な人が集められた。

ある人は物好き、ある人は単にこれからの行く末が知りたい者、どちらにせよ、これからこのコロニーはどうなるのかには興味があった。

そして、彼らは新たな支配者に絶望することになる。


「えー。とまぁ、なんだ。ここのコロニーは俺らが占拠して、まぁ復旧とかやるから今まで通り生活してくれ。以上!」

彼らが新しい主導者がバカだと理解するのに約1分の時間を要した

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る