第4話 戦場の異常

グアラスは警備兵を蹴り飛ばし、踏みつけ、マシンガンでスピードスターを迎撃する。

一見同士討ちのようだが、グアラスは明らかに孤立し、あからさまな殺意を向けていた。

マシンガンの弾による地面の崩壊、スピードスターのエンジンの爆発、旧世紀ではありえない静けさを放つ街に、凄まじい爆音が轟いていた。グアラスがほとんどの敵を始末した頃、コロニー内に流星が流れた。美しい炎をを纏い優雅に空をかける。だが、その形状は歪だった。それは、小型の飛行機だった。

グアラスの通信機器に、政府軍からの通知と思われる情報が送られる。

「政府軍から通達です。コロニー内の暴走したグアラスの破壊をしろとの事です」

「そんな物騒な事を僕はできませぇん」

「対象はおそらく貴方です」

「知ってる。ジョークだジョーク」

「私のもジョークですが」

「笑うポイントあるかぁ?」

軍用兵器の中でのんきな会話をしている。

戦闘機がグアラスを通り過ぎ、旋回して戻ってくる。と、同時に赤い光を帯びた流星を放つ。ミサイルだ。こればかりはグアラスの装甲も無傷とはいかない。

「Ada!ミサイルを撃つぞ。」

「了解」

マシンガンがミサイルを迎撃する。大半はどうにかなったが、1発がマシンガンから逃れ、グアラスに爆発を持って使命を果たす。

マシンガンを持った右腕の肩に当たり、装甲が弾けとんだ。しかし、グアラスとてその程度で動けなくなる訳ではない。

ミサイルを撃ったその体制で、飛行機を狙う。狙い違わず、流星は光を増して墜落した。

「そろそろヤバイんじゃねえか?」

「今更です」

今までに、様々な兵器が彼を狙っている。それだけ大きな騒動となれば、駆けつける兵器もさらに大きいものになる。

「…きたな」

そこには、グアラスの足音が響いている。

彼は歩いてはいない。

遠くに、2機のグアラスが見える。コロニーに配備機された残りの2機は、1機の反逆者をひねりつぶしに来ていた。

マシンガンがディオを襲う。

ディオもマシンガンで応戦する。

グアラスのマシンガンは対戦闘機用だ。お互いに無事では済まない。

前方のグアラスを盾に、後方のグアラスからの銃撃を逃れようと移動しながら戦う。

しかし、ディオのグアラスはカメラを破壊されてしまった。歪んだ映像を見つめ、ディオは歯ぎしりをする。前方のグアラスのマシンガンを破壊することに成功はしたが、それでも敵に有利な状況なのは変わらない。

ビルが多いおかげで後方のグアラスは自由に動けないが、それでも2対1になるのは時間の問題だった。

「仕方ない。一気に仕掛けるぞ!」

ディオは、グアラスに接近戦を持ちかけた。

マシンガンで牽制しながら近く。

敵の正面装甲を歪ませられはしたが、モニターが歪んでいるせいで弱点は狙えない。

敵のグアラスも距離を詰め、ハンマーを持ち上げる。

振り下ろした瞬間、ディオは左手を突き上げた。斜めに突き上げた。おかげで、胴体にハンマーがぶつかるのは回避できたが、頭部が完全に破壊され、右腕は折れ曲がり、原型を留めていない。すると、ディオはとんでもない自殺行為をした。

正面装甲が開き、ディオがむき出しになった。開けた視界を睨み、ディオはハンマーを逆手に持った。すると、ハンマーの柄の部分を敵の首と頭のすきまにねじ込んだ。

巨大なハンマーで遮られた視界、動かない頭部、体のバランスの崩壊で、人間臭い動きをしながら倒れそうになるグアラス。

ディオは、敵の胴体にキックをかます。

吹き飛んだグアラスが、盾をとしての役割を果たし、後方のグアラスを襲う

グアラス同士の衝突で、地面が破壊される。後方のグアラスはバランスを崩したが、マシンガンを捨て、腰からバズーカを取り出す。

緊急事態用の高威力のバズーカだ。

バズーカが、ディオのグアラスを襲う。

ディオのグアラスは木っ端微塵に吹き飛んだ。

周りの建物を砂の城を踏むように崩しながら残骸が地に横たわる。残った下半身でさえ装甲がほとんど残っていない。

赤い光を放つ残骸を見つめる政府軍のグアラスのモニタに、青い光が映される。その正体を確認すると、グアラスは直ちに迎撃体制を取る。バズーカで攻撃するが、大きな弾丸を容易くかわされ、流星が地に落ちた。

「さすがにスラスターを吹きすぎた。もうエネルギーがあまりないな」

そこには、ディオが立っていた。

距離を詰められたグアラスは、咄嗟にハンマーを振り下ろす。それをスラスターを吹かし回避したディオは、ハンマーを地面代わりに登って行った。肘のあたりまで行ったところで、ディオはジャンプをする。腰から熱刀を抜き放ち、正面装甲の可動部に突き刺し、溶断した。すると、容易にコックピット内部があらわになる。

「な、何なんだお前は…」

警備兵が残された人間性を見せたが、ディオは何のためらいもなく頭部を破壊する。

「エネルギー補給は完了。コロニー内の戦力は?」

「残りは飛行機型のみと思われます。バズーカで管制塔を潰せば恐らく戦力はなくなるでしょう。」

「お前もなかなかの鬼だな」

「合理的な判断です」

「そうか。やっちまってくれ」

コロニーが、1人の男の手に堕ちた瞬間だった

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