第3話 巨体と破壊

「…っ!暴れすぎたな…」

「暴れすぎました」

かれらは、先ほどの明るさが吹き飛んでいた。

それは、感情的にも、彼らに落ちた影で日が遮られた事にもよる。

「さすがに厳しいか?」

「いえ。ディオのアイデアしだいでどうにでもなると思います。多分」

Adaはかなり無責任に言葉を流した。

彼らの前に立つのは、デモ鎮圧から、反政府組織による戦闘部隊の壊滅まで、全てをやってのけるこの世界の絶対強者。

大型人型機動兵器の通称であるグランドバトラー。

コロニー内配備機グアラス。

この機体はコロニー内に配備するため、コロニーを必要以上に破壊しないように攻撃力を落とされている部類だ。だが、装備するマシンガンとハンマーの威力は、コンクリートづくりの建物を積み木を崩すように破壊できる。地面に立つグアラスと屋根に立つディオでは、ディオに大きなハンデを渡してもなお、身長2つ分のサイズの差を見せつけた。

「ずいぶん好き勝手やってくれたな。」

グアラスの頭部のスピーカーから警備兵の声が響く。

グランドバトラーは基本的に警備兵が操縦する。その操作は、今までのゲームのようなプログラムから、脳による思考に切り替えられた柔軟さを持っていた。

「なんだ。グランドバトラーを使ってんだ。お前の方がこれから無茶苦茶に街を壊すんだろ」

「いや、我々は街を守っているんだ。お前の様な無法者からな。」

そう言うと、グアラスはハンマーを振り上げた。

わかり易い大振りの攻撃だ。ディオは簡単に横にずれる。すると、ハンマーは建物にめり込み、クッキーを割るかのように崩れさせた。そのまま横にずらすように振り、ディオを襲う。ディオは、建物の屋根を割りながら接近するハンマーをジャンプして回避して見せた。

そこに、マシンガンが向けられる。

「頭が硬いぞ、今からミンチにして柔らかくしてやる!」

対戦闘機用のマシンガンがディオに放たれる。が、ディオは一瞬嫌な顔をし、覚悟を決めた。

「仕方ない。エネルギーはこいつから奪えばいい。あれを使うか」

着地地点を撃たれてはディオもなすすべはない。が、彼は「青い光を放ち空を飛んだ」

背中の細かい穴から淡い光を放ち、華麗にグアラスを飛び越えた。

「馬鹿な!一体なにをした!?」

「どうせ安物のボディには記録されねぇんだ。知る必要はないね」

グアラスの背中に着地し、首の付け根を探る。

装甲のうち1枚が開かれ、パネルを開く。

グアラスの緊急停止ボタンだ。それを押すと、グアラスがすべての行動を停止する。

すると当然、腹部のコックピットが開く。

パイロットの警備兵は何が起こったがわからずパニックになったが、ボディから送られる情報から、緊急停止の文字を見つけ、事態を把握し、絶句していた。

「そんな馬鹿な…こんな事は…」

それが彼の最後の言葉だった。

コックピットから見える外の景色からひょっこりと顔を出すライフルから、銃声と閃光が放たれる。次の瞬間、彼はすべての思考を停止した。

「さぁて。きちんと迷惑料は払って貰うぜ。」

そう言うと、ディオは警備兵の破損した頭に手を突き刺した。

警備兵の人工血液からエネルギーを吸収して見せた。

当然この機能は警備兵についてはいない。

彼の身体の異常さを物語っていた。

警備兵をコックピットから投げ捨てると、ディオはグアラスの主電源をつける。緊急停止のアラート画面を閉じ、通常の画面に戻し、モニタに手をかざす。

「頼んだぞAda」

「了解です。」

Adaのハッキングにより、グアラスは完全にディオの手に堕ちた。

コックピットが閉じられ、グアラスは新たな1歩を踏み出す。

「さてさて…もうここまで来たなら仕方ねぇ。派手にやるか」

「もう十分目立ってます」

Adaはそう言うと、モニタに敵対するものを写し、見やすいようにロックオンの表示をする。

数は15。どれもそこらの警備兵ではあるが、数名がスピードスターに乗り、マシンガンでグアラスを射つ。警備兵達もライフルをグアラスに浴びせるが、グアラスの敵ではなかった。

カツンカツンと小気味よい音を立てて銃弾が弾き返される。

「Ada。音楽をかけろ。プレイリストの大量虐殺だ。」

「了解」

警備兵とスピードスターがグアラスを襲うなか、ディオは不敵な笑みを浮かべた。

「恨むんじゃねぇぞ!」

グアラスは走り出した。

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