13 オムレツの月
スケッチブックにクレヨンでまるく描くライン。
夢中になって、両手で持つクレヨン。
お日さまのパレードみたい。
君のすきな黄色、たまご色、レモン色、みかん色。
たくさんのおいしそうな、やさしい色合い。
僕はそれを見ると、ママのようにお話を作りたくなる。
それを聞きたがる、君の瞳。
*
みかんのボートがありました。
それは、小さな手の持ち主の仕業なのです。
みかんの皮をちぎっては置き、またちぎっては置く。
さあみんな揃ったら、航海にでよう。
大きな波にのみこまれそうな舟たちは、すぐに後悔した。
ちっちゃなみかん乗組員たち、大海原に投げ出されてざっぱーん。
やっと岸に着きました。
わーい! と思うまもなく
みかんサイズのお手々がにゅっとやってきて
どこかに連れ去られていきました。
ぱくっと食べてにんまりする、その怪獣の正体はいかに。
あわれ、みかんの空ボート。ぷかぷか、ゆらゆら。
満足そうな、君のにっこり笑顔。
こら、またみかんで遊んでるって、ママの声。
*
土曜の昼下がりに、お散歩していると
君は空をゆびさし、月の存在を教えてくれる。
いつのまにか、昼の月もみえるんだね。
大根のうす切りに失敗したような
そっと置き去りの白く透けた月、半月。
「パパ、どうして月、はんぶん?」 と君が聞くので
「うーん、空のうさぎが食べちゃったかな」
とテキトーに答える僕。
今夜は、ママがオムレツをつくってる。
君は、フライパンの中をみて
「ねえねえ、うさぎさんたべた?」という。
ママは?な顔をする。
僕も一瞬なんのことかわからなくて。
そこには半分に折り返された、黄色のオムレツがいた。
フライパン直食いは、熱いだろうなぁ、うさぎちゃん。
わが家の日常を絵本にしたら、きっとこんな具合。
みかんだの、月だの、オムレツだの、もぐもぐだ。
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