第7話 ある箱庭の実験
皐と良子は校長室の扉を開けて、恐る恐る中を覗いてみた。
「・・・誰もいないな」
「そうだね~」
皐と良子は誰もいないことを確認して、明かりの付いていない校長室へ入っていった。
良子はスマートフォンのライトをかざして、周囲を見渡した。すると校長のデスクが見つかり、その上にデスクトップ型パソコンが置いてあった。
「あれかな~」
皐と良子はそのパソコンに近付き、良子がパソコンを起動させた。
見慣れたOSがディスプレイに映り、そしてパスワードの認証を求められた。
皐がそれを見て、良子に話し掛けた。
「これではお手上げだな。パスできないと何も始まらない」
良子はニンマリとして、校長のパソコンへ例のフリーWIFIスティックをスロットに差し込んだ。
「ここが私の真骨頂だよ~。見ていなさいさっちゃん」
良子はタブレットを手にして、様々な操作をしていた。
皐は良子が打開してくれると信じ、待っていた。
・・・数分後・・・
校長のパソコンの画面がいきなり「ようこそ」と言う表示が出て、デスクトップ画面へ移行した。
「うん、完了~。手法は説明を省くね~」
「ああ、それがいい」
皐は言われなくても、良子の説明を省くことに了承していた。
良子が校長のデスクの椅子に座ると、キーボードを叩き、家のパソコンと遠隔接続させた。
「よ~し。これでこのパソコンは丸裸にできる」
良子は舌で唇を嘗め回して、キーボードを叩いていた。そして探していたものを見つけた。
「あった。<ツブヤキ>関連とそのバグアプリの元だ」
皐はディスプレイを覗き込んだ。ツブヤキ関連のものは生徒の登録情報と通知した履歴等分かるものであった。しかし、バグアプリは全く理解不能なものだった。皐はため息を付いた。
「はあ~、授業はキチンとやっていても、全く分からん」
その感想に良子はフォローした。
「さっちゃん。これは無理だよ~。だって~、最先端の言語レベルのひとにしか~、分からない代物だよ~。商品価値があるってことだよ~。学生身分じゃあここまでは普通到達できないよ~」
その回答に皐は「ごもっとも」と答えていた。
良子がバグアプリの中身を探っていると、色々な特徴が分かってきた。
それを調べながらも、皐へ話し伝えていた。
「さっちゃん、このアプリはね~、スマホが持つ特有の電波で人の視覚や脳に信号を送っているみたいだよ」
「電波か。それで?」
「うん。大抵のひとはその電波に反応して、初期や軽度なら失神状態、重度になると狂人化。それで~、スマホのみならず、電波を発するものを~持っているひとをターゲットにして破壊行動にでるみたい」
「だから私たちを襲ってきたわけか・・・」
「それで~、やっぱり感染は~、このアプリがいわゆるウィルスソフトみたいな仕様だよ。知らず内にツブヤキから潜り込んで~、感染させてるみたい。でも、それほど強いウィルスじゃないみたいだから~、パソコンのセキュリティ対策で十分みたい。だからか~、携帯はそこまではセキュリティ強くないからね~。携帯のパンデミックだわ~」
黙々と良子は解析をしていた。皐は肝心なことを聞いてみた。
「解除はどうするのだ」
「・・・う~ん。壊すのは論外みたい。一番はアプリのアンインストールだね~。このプログラムが有れば、私がすぐ生成できるよ~」
「ホントか!」
「うん。自宅にそういう対策ソフトを自作で作ってあるから~。こうやって・・・」
良子は最後にエンターキーを押して、自宅のパソコンにファイルを送信した。
そして、良子はそのパソコンをシャットダウンした。
「うん、後は待つだけだよ~」
良子が皐にそう声を掛けると、皐はどっと脱力した。
「やれやれ、この悪夢もやっと終わりかな・・・」
そう皐が言って前を見ると、皐は硬直した。
その反応を見た良子も顔を上げると息を飲んだ。
校長室の入口に黒林(くろばやし) 兼次(かねつぐ)校長が立っていた。
しかも半笑いであった。
黒林は50近くにして、色黒で180cmぐらいあるガッチリとした体格の持ち主であった。
白髪交じりな髪をオールバックにしていた。
黒林はゆっくり部屋に入って来て、皐、良子へ話し掛けてきた。
「君たち、困るなあ・・・先生の部屋を勝手に捜索されては・・・」
その気味悪さに皐と良子は背筋が寒くなった。
皐が臨戦態勢をとり、その後ろで良子が縮こまった。
皐が意を決して、黒林に言った。
「・・・校長。貴方が仕組んだことなんですか?」
その質問に黒林はゆっくり皐たちに近づきながら答えた。
「そうだ。この学園を実験の箱庭として、ある成果を得るためにな」
「ある成果だと・・・」
皐らと校長は距離を保ちながら円を描くように部屋を移動していた。
「この優秀な生徒たちで、このアプリの性能を把握するためだ」
「なんだと」
「結果はあまり一般の人と大差がなかった。まあそれだけでも研究の成果だ。次は低能なもので試したらどうなるか、確認してみたいものだ」
黒林の人体実験をしていることに対しての悪気の無さに皐は怒りを覚えた。
「どうやら、我が校の校長は人道的に救いようのないクズらしいな・・・」
皐のその発言に黒林は笑った。
「ハハハ・・・世の中にはクズなどゴミのような数程いるわ。お前らに別に評価してもらおうと一切思わん。私はこの力を使って、東京に新たなる夜明けを見せてやるのだ」
黒林は自己陶酔をしていた。彼が何故そういう風になったのか、皐も良子も理由を知らない。ただ、彼がアプリで東京を混沌させるという意思だけは理解できた。
「狂ってる・・・」
「う~ん、バグアプリに汚染される必要もないほどだね~」
皐、良子と黒林の距離が詰められ、もう間近という時に、良子が部屋の花瓶に体が触れたことに気が付いた。
「(よし!これを)」
良子はとっさの判断で、花瓶を黒林に投げつけた。
黒林は腕でそれを防いだ。その隙に2人は校長室から廊下へ走り出て逃げ出した。
「ぐっ、小癪な真似を」
黒林は逃げた2人を追った。
皐と良子は走り、正面玄関に向かっていた。すると前からライトを持った教頭の小石川が宿直のため巡回していた。それに皐が気が付いた。
「あ、カツラだ」
「うん、カツラだね~」
小石川は廊下を激走してくる2人と静止を求めた。
「2人ともー、廊下は走らない!」
しかし2人はそんなこと聞くわけには行かない。後ろからも激走してくる黒林という追跡者が来ていた。
小石川は両手を広げ、止まれと叫んだが、皐と良子はその片方ずつの下を分かれて、通過した。
その後走ってきた黒林と激突した。
小石川は派手に吹っ飛び、廊下に打ち付けられて気絶した。
その頭はピカッと光るものが全面的に現れていた。
黒林もその衝撃にふら付きながらも何とか持ちこたえていた。
皐と良子は走りながらも後ろを振り返り、2人が衝突したのを見て、速度を落とした。
皐は良子を見た時、良子の手にフサフサしたものが見えた。
「お良。なんだそれは・・・」
皐に尋ねられた良子はそのフサフサした物体を説明した。
「あ~、コレはついでにうちの学校の噂を実証するための証拠品だよ~」
良子は笑顔で皐に証拠品を見せびらかしていた。
皐はため息を付いた。
「随分と余裕があるじゃないかお良」
「えへへ・・・」
そう皐と良子をやり取りとしていると正面玄関に辿り着いた。
そして2人が正門へ向かおうと足を向けると外の光景に唖然としていた。
「なんだと」
「え・・えええ・・・」
桜明の感染した生徒たちが正門から2人を逃がさないように囲んでいた。
そして黒林も皐たちに追いついた。
「全く・・・手のかかる生徒だ。しかし、これでゲームセットだな」
そう黒林が勝ち誇っていた時に、良子のタブレットへある報告が届いてた。
それを見た良子は黒林へ自身が言ったことと同じ事を言った。
「そうですね~、これでゲームセットです」
良子はタブレットを操り、桜明の感染した生徒のスマートフォンを遠隔でアンインストールし、シャットダウンさせた。
すると、皐たちを取り囲んでいた桜明の生徒たちは一斉に倒れ込んだ。
その光景を見た黒林が呆然としていた。
「バ・・・バカな・・・」
黒林はその場で立ち尽くしていた。
すると丁度のタイミングで、学園の正門より御手洗と数人のスーツの男たちが学園内に入って来た。
スーツの男たちの一部は崩れ落ちた黒林に手錠をはめて、学園外へ連行して行った。
そして残りは学園内の捜索のため、正面口から入っていった。
御手洗は皐と良子の方へ近づいていった。そして御手洗は2人に語り掛けた。
「よくやった2人共。さすが私が期待しただけの事がある」
御手洗は笑顔で皐と良子を褒めた。2人共素直に受け入れたが、御手洗の正体について釈然としないため、それについて皐が質問した。
「御手洗さん、貴方は一体・・・」
「ああ、そうだな」
御手洗は懐に入った警察手帳を2人に見せた。
「警視庁公安部公安庶務課サイバー攻撃特別捜査隊所属、御手洗(みたらい) 聡介(そうすけ) 警視だ。このバグアプリの関東圏内の捜査を担当している」
それを聞いた2人はホッとしていた。警察が動いていたという事実が精神的に彼女らの救いになっていた。2人も御手洗に自己紹介をした。
「私は財部 皐。こちらは白河 良子。警察だったとは露知らず、先ほどはお恥ずかしい限りです」
「えへへ・・・よろしく~」
御手洗は皐の謝罪を快く受け入れると共に、それはお互い様だと返した。
「財部君。事が機密事項だったんだ。言葉足らずになってしまったのは致し方ない事だ。こちらこそすまない」
そして御手洗は皐と良子を見て、不思議に思った。それについて2人に質問した。
「そう言えば、もう1人はどうしたのだ」
その質問が瑠美についてだと気付いた2人は瑠美が途中で逸れたことを良子が御手洗に伝えた。
「あの~、途中で逸れてしまって~、確か、すぐ傍の神社辺りだと思うんですけど・・・」
それを聞いた御手洗はすぐ連絡を入れて、その付近の捜索を命じた。
「これで君の友達も見つかるだろう」
それを聞いた2人は御手洗に礼を言った。
「有難う」
「ありがと~」
その時、正面玄関から学園の捜索に入っていた捜査官たちが次々と正面玄関から吹っ飛ばされる形で出てきた。
「・・・困りましたね。あの黒林を操って、色々試していたのに・・・」
教頭の小石川が眼鏡の中央をクイっと指で持ち上げ、そう述べていた。
その片手には捜査官の頭が捥ぎ取られていた。
御手洗が小石川を警戒し、すぐさまスマートフォンを手に取り、自身の能力を引き出した。
それと同時に周囲に悪寒がまとわりついた。
皐、良子とも歯がガタつき、両腕を抱え混んでいた。
「(なんだあのカツラ・・・)」
「(わからない・・・なんでカツラが・・・)」
皐も良子もただのカツラだと思っていた小石川を異質な生物のように感じた。
御手洗も同様だった。御手洗は小石川に話し掛けた。
「貴様・・・その力、F市の災厄の仲間か!」
その発言に皐と良子は理解不能だった。
しかし、そんなことは気にせず進行していく。小石川はその質問に答えた。
「ああ、<ウィザード>のことか・・・彼は特別だよ。先程電話があってね。黒林の成果と引き換えにあるものを渡したいと話があってね」
「なんだと・・・お前は誰だ」
「私は<ピエロ>だよ」
「ぐっ・・・本部からは何も聞いていないぞ!」
小石川は高らかに笑った。
「そりゃそうでしょうよ。お前ら如きの技術やレアじゃ私たちを捕捉するのなんて夢のまた夢だ」
御手洗は歯をギリギリさせていた。皐は知らない言葉が飛び交っているのでそれについて端的に説明を苦しみながらも求めた。
「御手洗さん・・・、この状況は・・・聞かないですが<ピエロ>とは?」
「ああ、A級バグテロリスト。サイバーテロでの犯罪レベルの等級だ。Aまで行くと、街1つぐらいは簡単に消せるほどだ。一人一人の技術力は勿論のこと、このようにうちのエージェントすら容易く蹂躙できる戦闘力も有するものも少なくない・・・」
それを聞いた良子は怯え、皐は顔をしかめた。
御手洗は小石川にこの場にいる目的を聞いた。
「貴様は確か関西の方で良く聞く名だ。なぜ東京に!」
小石川は不敵に笑った。その姿にもはやカツラを気にしていたあの頃の柔和な印象は微塵としてなかった。
「まあ、私の場合は<ウィザード>とは違って、それ程崇高な使命感はありませんねえ~。ただ面白い道具があったと聞いて、それを彼からお借りした。それを使って、自分でも実験をして影響を見たかっただけなんだよ。ただの愉快犯さ。君も<ピエロ>を知っているなら、それぐらいはご存じなんじゃないかな?」
御手洗は記憶より<ピエロ>資料の概要を思い出していた。確かにただの愉快犯に過ぎない。それよりも<ウィザード>のバグアプリが他のバグテロリストを誘引させている事実に危機感を感じた。
小石川は異様な雰囲気、圧力感を発しながら、正門から学園より出ようとした。御手洗はそれを止めようと仕掛けた。
「逃すか!」
御手洗は一歩跳び小石川に詰め寄った。そして左拳で彼の背中の中心を撃ち抜こうとした。小石川はそれを読んだかの如く体を右に捩じらせ、そのまま時計回りで御手洗の体の前を取って掌底で御手洗は拭き取っていった。
「ぐっ・・・」
御手洗は衝撃で2メートルぐらい跳んだが倒れず踏ん張り、刹那小石川に再度詰め寄った。
「おっ?元気だねえ」
「ふざけるな!」
まるでSFで見るかの様な凄まじい速度の組手。しかし小石川に決め手が入らない。小石川は防戦に徹し全く御手洗を相手にしないからだった。
「く・・・ここまで徹底して防戦とは・・・」
「ハハハ・・・それはそうだよ。君とはここで戦う気はないからね。さてそろそろかな?」
小石川がそう呟くと、校門のところから数々のピエロのマスクをした集団が入って来た。
そのピエロたちは公安の職員を次々とのしていった。
「団長。お時間です」
「ああ、有難う」
そう言ってピエロたちとぞろぞろと校門から出ていくところ、襲い掛かってくるピエロマスク達を撃退している御手洗が呼びかけた。
「待て!何処へ行く!」
小石川はその呼びかけに首を御手洗の方へ向けて答えた。
「私は<ウィザード>に会いに行く。このアプリを実験結果付きで返さないと。それと引き換えに何かプレゼントがあるみたいだからな。それと黒林の尋問は無駄だよ。彼は私がただ洗脳しただけだから。じきに全て忘れる」
その後小石川はピエロ達と堂々と学園から出ていった。職員らは小石川にやられた2名以外は皆負傷だけで済んでいた。そのことに御手洗はホッとしていた。小石川が学園から消え見えなくなるとその悪寒が消え去っていた。皐と良子は脱力し、その場に座り込んでしまった。それについて2人共不満を漏らしていた。
「なんなのよ~。あのカツラは~」
「まるで隙がない・・・飛び込むと瞬殺されそうな殺気だ・・・」
皐がそう感想を述べたことに御手洗は褒めた。
「そうだ。奴は尋常ではない。彼程の<レアリスト>ならこの場にいるもの全てを殺戮できるだろう。<ピエロ>ならではの気まぐれに我々は救われたようだな」
御手洗はその場にタバコを取り出したが、皐がそれを取り上げた。
「!っつ、なんだ急に」
「ココは学園内です。禁煙」
皐にそう言われた御手洗は頭を掻いて、少し笑い、そして事件の詳細を<レアリスト>を含めて説明始めた。
「<スマートコンプレックス>は前話した通りだ。白河君だったかな。遠目からだが、君が何かをしていたのは知っている。恐らくアプリのコントロールを解く方法を見つけたのだろう」
そう言われた良子はコクリと頷いた。
「我々もあのアプリの解析等は済んでいる。しかしながら、シンプル過ぎる作りで蔓延を食い止めることがほぼ不可能と判断した。あのアプリは元々、私らの国家プロジェクトの一環であった<スマートリラックス>が要因でもあった」
御手洗は一呼吸置いて、再び話し始めた。
「<スマートリラックス>は脳波や視覚に訴えかける感応アプリだ。<ウィザード>はそれを利用した。元々彼らバグテロリストはそれぞれの企業の研究機関の人たちだった。研究内容は主に洗脳に近いものだった。良く言えば、人の好奇心をそそるものを生み出すためのシステム作り。その行きついたさきは催眠や洗脳と言う、危険極まりない思想へ偏向していった」
皐と良子は固唾を飲んで、御手洗の話を聞いていた。
「そして、実験が行われた。私もその被験者の一人だが、その実験には多くの犠牲が伴った。しかし企業としてはどこもそれを止めようとしなかった。一種の病気だな。少なからずとも結果を残したからだ。それが<レアリスト>。自身の脳をフルに使うことができ、様々な奇跡を起こせる者たちが生まれた」
そして、御手洗が学園外の警察車両へ2人を案内した。この場を撤収して、瑠美の捜索をするために。その間も2人に話し続けた。
「その奇跡は<人の脳に訴えかけることができる>ことや<周囲の物理的な現象に関与できる>ことだった。各企業はその成果に喜んだ。しかしその被験者である彼らはその覚醒的な出来事に異なる価値観を覚えるものが出てきた。彼らはそれを破壊行為に使った。その者たちがバグテロリストと言われた」
皐と良子は車の中で、小説のようなフィクションの話を聞いていて混乱を極めていた。それを気にせず御手洗は話す。
「各企業は実験の成果とテロリストの存在を政府に報告し助けを求めた。それで我々が秘密裏に対処することになった。事は日本を代表する企業がすべて関与がある。それを世間に公表しては日本が沈む」
御手洗は事情を全て話し終えた。皐と良子は話をゆっくりながらも自分のペースで組み立て、理解していこうと努力をしていた。
公安が桜明を管理下に置いた時、化学教師の篠原は校舎3階の教室の窓からその一部始終を伺っていた。
「・・・フフ。道化を見せて去っていったみたいね。彼も情報を手にしたけど私も上々。<ウィザード>と合流するにも彼は本命らしきものに目星つけたみたいだし」
篠原は困った顔をしていた。その背後に公安の男性職員が巡回で篠原を見つけた。
「白衣をきた女性を発見。アプリで解析後保護します」
インカムで職員が知らせ、篠原がバグアプリに汚染されていないか調べた。
結果シロだった。職員は即座に呼びかけ救助に回った。
「そこの女!」
篠原は思いふけっていてその職員に気が付かなかった。呆気に一瞬取られ、
「私?」
と指を自分に指して答えた。その仕草に篠原がハッとし、その職員は今まで踏んだ場数故に厳しい表情をした。
「・・・貴方は何に驚いたのだ。そして何に動じなかった。ここは女子高だ」
篠原はキリッと奥歯を噛んだ。そして一歩でその職員へ間合いを詰めた。
「なっ!」
職員が驚いた時、職員は糸の切れた操り人形の様に地面へ崩れ去った。
「フフ、私の速さはウィザードでも捉えられないわ。運がなかったわね」
そう言って篠原は暗闇の校舎の中忽然と消えていった。
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