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熟成


 どっかの大手通販なら今までの販売履歴が全部残ってるんだろうけどな。たいがいの|マイナー通販≪グレーマーケット≫は10年も追えねえんだよ。名前、ID、クレジット、送付先、いろいろ使い捨てて購入してある。それに自分で買わないで調達屋を使う手もあるし。


 それらを各地のコンテナに物理的に集積して寝かせて。消費期限が限られたものもあるけど、まあ大丈夫だ。そういうシビアなものは合法品を買った方が安心だしな。


 フルオートの銃をゼロから作るなら手間も工具類の調達も大変だが、使い捨てのデリンジャーなら簡単だ。どこのハードウェアストアホームセンターでも手に入る鉄パイプと通販で仕入れたベアリング球か鉛球があれば先込の切り詰め散弾銃ソウドオフなんぞ楽勝。南北戦争時代の代物に毛が生えた程度になるが市販品のパーツをかき集めて出所の分からねえもんができるんだからありがたい時代だよ。加工なんてほとんどなしで簡単に組み上がっちまう。なんせ丈夫なステンレスパイプにネジが切って売ってるんだぜ? それにばっちり合う蓋も規格品だ。撃発装置にはハンマーとトリガーなんざ必要ない。古式ゆかしい電球とスイッチに電池がどこにでも売ってあるからな。


 発射薬も無煙火薬じゃなくて黒色火薬を自作すりゃ圧力をそこまで気にせずに作れるし。バレルが短けりゃ黒色火薬のほうが有利ですらある。木炭と肥料と土壌改良剤をちょいと混ぜてやればできあがり。土壌改良剤が手に入らないなら無しでも作れるレシピがある。食品添加物として売ってるものだけで完成だ。肥料も「そのもの」が手に入らなくても別のやつを水に溶かして冷やして濾して、って簡単な方法で合成できる。

 最近じゃ手に入りにくい自己発火性物質も代用品になるものがそこらで手に入る。爆弾なり火炎瓶なりに使えるフルオートの点火システムだ。硫酸と塩酸塩がなくてもどうとでもなるもんだ。ある種の消毒薬にブレーキフルードを混ぜてやれば数分後には火が出る。多少のタイムラグには目をつぶってくれや。古典的なのが好きならマッチと側薬で衝撃反応式の点火装置だって作れるしな。最近じゃマッチなんてもんは手に入りにくいかも知れない。でも土地・・に一つはある仏具屋にでも行けば売ってるだろ。古いスタイルのほうがいいって人間はいつの時代にでもいるもんさ。


 製造なんて危険なことも自分でやりたくなけりゃ合成屋なりなんなりにお任せでもいい。趣味で請け負ってくれるやつはリストにたっぷり載っている。アングラを渡り歩く物好きはどこにでもいるもんだ。


 まあ要は金さえあれば足がつかない方法でなんでも手に入る、ってこった。もしくは自分で手間をかけて作ってもいい。


 オレはそういう手間と時間と金のバランスを考えてどっちにするかを選ぶけどな。火炎瓶やパイプ爆弾を作った時は材料や薬品類だけをいくつもの調達屋経由で購入して自作した。いくつかの工程は面倒くさかったから外注したけれど。


 わずかでも情報漏れが怖けりゃ自分でやればいいし、それ・・込みで許容範囲内なら安くて早いやり方をする。


 優先順位さえ間違えなけりゃそれなりに使えるものがそれなりの値段で後腐れなく手に入るってわけだ。


 今回のターゲットは……

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