第3夜「ポケモンGO」

 池袋に同僚が住んでいるのですが、この間、気味の悪い話を聞いたのでその話を。

 池袋駅東口からしばらく行ったところに南池袋公園という場所があるんです。この公園、長いこと工事のため閉鎖されていたのですが、最近になり、ようやく再オープンし、今はものすごくおしゃれな場所に生まれ変わりました。以前は、浮浪者の炊き出しなんかも行われていて、暗く地味な公園だったのですが。

 深夜、当時流行っていたポケモンGoを片手にうろうろと散歩していたのですが、公園内にイシツブテという名前の岩石のようなポケモンがいるという表示が出てきました。このゲーム、捕獲画面になると、実際の風景の上にモンスターがいるように表示され、現実の世界の中で捕獲しているような間隔を味わうことができるのです。

 何度かイシツブテにボールを投げつけていると、その後ろ側にある柵の向こう側、公園の真ん中に黒い小山があることに気づきました。公園の中央は平坦な芝生になっていて、立体物は何もないはずです。しかも、少しもぞもぞと動いているように見えました。

 なんだろう。この時間だと公園の中には誰もいないはずなのに。南池袋公園は夜の10時になると閉まってしまい、その後の出入りはできません。

 スマートフォンから顔を上げ、柵の間から中をひょいと覗いてみました。

 照明も少なくよく見えないので、目を細めてじっと見ていると、黒い小山だと思っていたものは、折り重なって積み上げられたマネキン……いや、人間の焼死体のように見えます。

 うわぁぁぁぁ。

 慌てて明るい繁華街の方に逃げ出しました。

 後日、このあたりの歴史を調べてみると、公園のあった場所は、戦時中、空襲で亡くなった身元不明の遺体が大量に積み重ねられていたそうです。もしかすると、きれいな場所になっても、我々を忘れないでくれと土地の記憶が訴えかけてきていたのかもしれません。

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