第2夜「混線」

 これは、ラジオのADになった大学時代の友人から聞いた話。

 ラジオ番組では怪談を語ると打ち切りになるという都市伝説があるそうです。一時期、怪談特集をした直後に長寿番組が終わるということがあって、まことしやかに噂が流れていたようですが、実際には、宗教関連の事件があったり、怖がって局を変えてしまうといった理由もあったようです。

 その時も、あるお笑いタレントの深夜番組で、怪談企画をやろうという話が持ち上がりました。そのタレントさん自体が、テレビではしばしば怪談を披露していましたし、すでに3年も続いていて、縁起は悪いけど、最近他の番組では怪談をやっていないからたまには良いのではないか、という話になりとんとん拍子に企画は進んだそうです。

 番組当日、タレントさんとゲストの怪談師の方がそれぞれ持ちネタを話し、その後、メールで送られてきたリスナーの体験談をいくつか読んだりしましたが、幸か不幸か、何事もなく無事、収録を終えました。

 ところが問題はその後でした。放送後、何人かのリスナーの方から、名前の紹介がなかったけれど、もうひとりいた女性は誰だったのか、というメールが送られてきたのです。全員が全員聞こえたわけではないようなのですが、タレントさんも怪談師の方も男性だったにも関わらず、女性の

「うん、うん。怖いねー」

という声が入っているというのです。スタジオにはたしかに二名しかおらずそんなことはありえないのだけど、念のためということで、関係者でその番組のテープを聞き直してみました。しかし、当然そんな声は入っていない。その時は、きっとあまりの怖さに幻聴を聞く人もいたんだね、という話になりました。

 ところが後になって、どうも特定の地域の放送で、混線が発生し、他局の女性パーソナリティの声が混じってしまったらしいという話が出てきた。

 正体見たり枯れ尾花とはいうけれど、心霊現象なんてそんなものだよな、と思ったそうです。

 翌週、「リスナーさんから、この間の怪談特集でいないはずの女性の声が入ってるというメールが来まして」と、タレントさんがこの話の顛末を面白おかしく説明しはじめた。

 そして、「僕は、幽霊なんて信じませんから」と言った瞬間、

「いないわけないじゃない、ハハハ」

という声が、また混線してきたという話を後になって聞き、関係者一同、二度とラジオで怪談なんてやるまいと思ったそうです。

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