第300話 エレナさんの誕生日、祝う or 祝わない




魔法協会本部、

魔眼のリグレットは、物憂げに外を眺めながらお菓子をつまんでいた。





その様子を見た同期が声を掛ける。

「リグレット~、どうしたの?難しそうな顔して」




「・・・別に・・・」




沈黙、

同期はリグレットのお菓子をつまみ

お茶を淹れる。




「もうすぐさ・・・エレナさんの誕生日なんだけど・・・」





「で?」





「祝うべきか、祝わざるべきか・・・悩んでてさ」


「えー、祝えばいいんじゃない?」





「そんな簡単な話じゃ、ないんだよ!!」




席を立ち、机を叩く、リグレット





エレナさんは今年でピー歳だよ?

誕生日を祝うってことは、その事実を突きつけなきゃならないって事なんだよ?

アクアローナ様だったら「私永遠の18歳だぞ☆」とか言ってネタに出来るけど、


エレナさんは絶妙にグレーゾーンで、どう接したらいいかわからないんだよ!





「そんな、大げさな」





いや・・・対応を間違えれば、殺される可能性すらある。


近頃のエレナさんの完成度はすさまじいの一言に尽きる。

元々脚力と魔力重視で攻撃するタイプだったけど、長い車いす生活で『腕力』が確実に上がってる。


この間のリハビリに付き合った時の絶槍での『突き』の威力・・・



このまま元の脚力まで足が回復したら、一体どれだけの化け物が誕生するのかって、戦慄するレベルだったし!




ああ、今まで「魔眼で見せた幻術でした~」とか言って、しのいできたけど、もう限界

正直、私、魔獣以外にそんな術使わないし!普通に!








$$$








エレナさんの誕生日、当日



「リグレット!」




エレナは慌てた様子でリグレットに話しかける。



「机の上にこんなものが」



その日の朝、エレナさんの机の上には花束とプレゼントが置いてあり、

メッセージカードに『誕生日おめでとう、謎の紳士より』と書いてあったらしい。



「え、誰だろ・・・私じゃないけど」



白々しく、驚くリグレット

当然、リグレットの置いたものである、

結局悩んだ末、匿名で渡すことにしたのだった。





「そんな・・・こんなの・・・困るわ」





顔を真っ赤にして恥ずかしがるエレナさん


(ん、なんだこのウブな反応)



そのあまりに乙女な反応に、「また爆弾、抱えちゃったな」とリグレットの胃はきりきり痛むのだった。





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