第297話 肉壁マーゾ ホットライン相談受付室




たまに見る夢





燃える村の家、魔獣に襲われる人々

自分の身を犠牲に俺を守る優しい女性




どうして 俺なんかを かばうんだ・・・




俺が・・・



その傷を・・・その痛み・・・その苦痛を・・・



引き受けてやりたかったのに・・・








$$$









大手魔法協会には『ホットライン相談受付室』と呼ばれる部署が存在する。





日々、言い争いの絶えない魔法協会において

最近併設されており、主に協会員の相談や心のケアをおこなう。


その統括は七賢人のひとり『マクラーレン=メリオドス』であり、


色々な利害から遠く、話すと心の落ち着きを取り戻せるとの事から一任された。

あと魔法協会女性職員からの要望も多数・・・






マーゾは



『ホットライン相談受付室』そわそわしながら周りを見つつ

こっそりその扉を開ける。





森・・・




そこには森が広がっていた。



その奥の小屋のテラスに腰かける人物

石膏像のような長身の・・・裸の男。




これか七賢人のマクラーレン様か・・・

なんというか・・・大樹の様な静かなオーラを感じる・・・カッコよくて、漢らしい・・・





「・・・ふむ・・・君はマーゾ君だったか・・・『先日の大怪我』はもう大丈夫かな?」





「ええ、すっかり、全快です」




「え?」




「え」




「いや、少し驚いただけだ、今日は何の用かね?」






「・・・実は・・・」




言い辛そうに言葉を濁す。


「やっぱ、いいっす」



「・・・まぁここに座りなさい、一杯お茶を飲むくらいの時間はあるかな?」






・・・






気まずい時間が流れる。


マーゾが相談したいこと。


この間の任務で、

大怪我を負った、その事でアーネスにすごく怒られた。



まぁいつもの事だが、今回は流石に、キツかった。





「俺・・・魔法協会の討伐部隊に 向いてないんじゃないかなって、考えちゃって・・・」






その言葉を発してしまった。


どんなに頭をよぎっても考えないようにしていたその言葉を

人に対して発してしまった。



汗が止まらない。





・・・






ふー




マクラーレンは深く息を吐く。




そして、ゆっくりと話を始める。





昔、クラスティア王国とラグベール王国が戦争をしていた時代の話だ。

私はある選択を迫られた。



北部の魔法協会の支援に向かうか、首都周辺での防衛に徹するか



私は迷った。私の判断ひとつで多くの者の命が失われるからだ。

そんな時、妻が私に言葉をかけた。



「あなたの判断に私達の命を預けます、どうか私達にご支持を」



妻は私の部下たちの署名を集めて回ってくれた。






確かに君の能力は、特殊に過ぎる、だから、向いていないと考えるのも無理はない。






だが、アクアローナ含め、君の能力のポテンシャルは低くないと考えている。



私はあの時、妻に背中を押してもらった。


ならば、今度は私が君の背中を押そう。




その言葉にマーゾは、

咽び泣くのを止められなかった。




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