第295話 肉壁マーゾ 始動




マーゾという少年は貴族の令嬢のアーネスにとっての幼馴染であった。






魔獣に村を滅ぼされた遠縁の親戚を使用人として引き取っただけの関係

唯一年が近い事もあってか、たまにこっそり一緒に遊ぶ仲だった。



アーネスは美人だが、気が強く、

他の者は彼女から何歩か距離を取りがちだったが、

マーゾは鈍感で、そんなマーゾにアーネスはよく懐いていた。




しかし、ある事件を境に一緒に遊ぶことをめっきりやめてしまう。





その日、

アーネスが強盗まがいの暴漢に襲われそうになった。


男達から振り下ろされる鉄の棒

アーネスは怖くて目を伏せ屈む。


ガン!ガン!


何度も振り下ろされる。




(・・・あれ・・・痛くない?)




見上げると、マーゾが、身を挺して私を守っていた。


「この野郎、なんでここまでの攻撃を受けてピンピンしてやがる?」





「・・・この程度で終わりか?・・・こんなんじゃ全然『満足できない』ぜ!」





血を流しながらも、

悪魔のごとき笑顔を浮かべるマーゾに暴漢達は気圧される。



「ッ・・・んだとぉ!こらぁ!!」



挑発され、さらに激しく攻撃する暴漢達

だが、いくら撃っても、いくら叩いても、いくら斬りつけても

マーゾは倒れない。



滴る血・・・



死んでもおかしくないぐらいボコったのに

まだピンピンしてこちらを見る目

恐怖や怒りはなく、むしろ・・・こいつ・・・


その様子に恐れを抱いた暴漢達は逃げていく。




「・・・」




「大丈夫か?アーネス・・・」




・・・



助けてくれてありがとう、

その傷早くお医者様に見てもらわなくちゃ


そう言うつもりだった・・・


だが、


頬を上気させ、ちょっと嬉しそうなマーゾに、

その言葉は、勝手に発せられていた。





「気持ち悪い」







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