第289話 新作『星』の目




ダークエルフの『ステータスオープン』は、

対象が持っている『魔術式』を読み取るモノだ。





風切りは魔力を剣に垂れ流す基礎魔法であり、

解析の結果ウツロは『何の魔法も使えない人物』と判定された。

(過去に使った魔法障壁のみギリギリカウント有)


相手の能力を見切っているという過信が初手の判断を鈍らせる。







風を切る音と共にダークエルフの腕に線が走る。




なんだ?




「何・・・しやがった?」




「さぁね」

ウツロはさっさと踵を返して逃げる。



同時にミラの魔法が発動する。

『炎』の目



豪炎球乱れ撃ち!!




前後左右から炎の塊が押し寄せる。

魔法障壁で防御したものの、たまらずその場から弾き飛ばされる。



次々と繰り出される多属性の魔法




(こいつ・・・ただの器用貧乏じゃなく、ひとつひとつの魔法の威力の・・・タガが外れてやがる・・・)




どうする?・・・何か手はないか・・・

なんか腕がかゆいな・・・この猿女を潰す手は・・・あと腕がかゆい




考えている内に




魔術障壁にヒビが入る。





考えろ!猿女を倒す方法





・・・




こいつの魔法のスキマは多い




その隙間を縫って接近して




直接魔法をぶち込んでやればいい





・・・






ミラの魔法はダークエルフの魔法障壁を砕き、本体に襲い掛かる。

喰らった体からボロボロと砂が零れ落ちる。


(あれ?人形?)





ここだ!






ミラの魔法の死角からダークエルフは接近する。

魔法を発動させる瞬間

剣を振りかぶる男の姿が目に入る。




!?



こいつの存在を忘れていた。



自動魔力感知にも引っかからない、

いや、こんな太陽みたいな魔力持ってる奴の傍で

こいつの微弱魔力なんて拾えるかよ!




油断してガラ空きの首筋に、ウツロの風切りがダークエルフの首筋を切り取る。






「ッ・・・・クソが!!エルフを舐めるなよ!!!」






エルフの体が光を放つ。

傷がみるみる修復していく。


(回復魔法・・・仕留めたと思ったのに、このチート持ちめ)






「・・・いいえ、これで終わりです」






『星』の目






ミラの魔力の質が変わる。

周辺の空間すべて支配されたように重い。





ダークエルフにはその様子が走馬灯のようにスローに映る。


それは目に前に迫る『死』を直感するに十分な迫力を備えていた。





大空の彼方から大きな隕石群が、雲を突き破って飛来する。





う・・



うう・・・




うわああああああ!!!




爆音と共に周囲の草が木、地形すらも、なぎ倒された。





・・・





(これ跡形も残らないんじゃ)


ウツロはぞっとする。

それでも、ダークエルフは最終ギリギリ生きていた。




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