第253話 疑いのない一撃




毒針盗賊団のポズンは慎重な男だった。





常に相手の情報を集めリスクをできる限り減らして対応する。

彼のやり口だった。


ならば、盗賊という稼業は性に合わないと考えることもあったが、

一度悪に手をしまったからは、後戻りはできなかった。

それもリスクである。




うらあああああ!!!





ポズンは

ミヅチの攻撃をひらりと躱す。



(ん、何だこの棘、ああ、毒針か)




「『魔鎚のミヅチ』お前のことは調査済みだ」


その大きな武器が威力を発揮することはほぼない。


だったら遠巻きに立ちまわってこの毒針を撃ち込んで

削っていけばいい。


「お前に比べて地味な戦法だがな」




そんなことはねぇさ・・・



ちびちび賭ける奴、どかんと賭ける奴、

俺は後者が大好きだが、



「誰もが等しく、ギャンブラーだ」





やりとりは続く。



徐々に毒が回り始め、ミヅチの動きは鈍くなる。



だが、その目に、絶望の色はなく

魔鎚を振り下ろすほどに集中力を増していくように感じた。



実際、ここまでイカれてると思わなかった・・・



不安定な武器

防御を考えない攻撃

常に自分の命を投げ出すようなもの


そして、それでも、自分の勝ちを一つも疑っていない




確かに・・・

もし当たれば、

とんでもない威力なんだろうな・・・




それは魔が差したような一瞬の油断だった。




踏み込む足音で地面が振動する。

その形相、竜のごとし




しまっ・・・




恐怖で後ずさった。

ずるりと地面の砂に滑る。





凄まじい爆音と共に周辺の地形が変わる。




・・

・・・

・・・・





「・・・ちぃ外した」




間一髪外れた事にポズンは安堵する。


立て、立て・・・力が入らない



「?」




は・・・はは・・・



腰が抜けた




勝負はそこで決したのだった。






$$$







周囲の様子をテツィは察する。



「・・・」




(今日のミヅチは・・・珍しく当たりか)




「残りを片付ける。ウツロ、フォローよろしく」


テツィは大剣を地面に向けて臨戦態勢を取る。

口角が少しばかり上がっているように感じられた。




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