第252話【ラグベール過去編】吟遊詩人の語りの中で





そして現代、

元ラグベール城の残骸で

帽子をかぶった魔獣の吟遊詩人はうたう。





その三日月の夜、

ハンクはホビル王の城にラグールと共に襲撃をかけました。

ホビル王と共に市民を食い物にしていた貴族の多くが

軍隊を使って彼に反抗しましたが、

全員、消し炭にされてしまいました。


そして、ホビルの国はラグベール王国と名を変えるのでしたとさ・・・




・・・




「素晴らしい歌であった・・・」



ラグベール城の残骸の近く、


『倒れている骸骨の魔獣』は吟遊詩人を讃える。



下半身のない骸骨のそれは

起き上がることもできず、ぷるぷる震えていた。




「お褒め頂きありがとうございます」





「物語の方も興味深い・・・その・・・奴め・・・ではなくハンク王は・・・どんな王様だったのかお聞きしても良いだろうか」






「国民に対して平等に接し 正義と秩序を重んじる それはもう良い王であったと伝えられていますよ」



「ふふ・・・まぁ当然だ、奴は選ばれた人間だからな!」




「あの・・・その下半身のない骸骨のお姿・・・伝承に伝えられるラグール様そっくりで・・・もしや」




「・・・おいおい」




ラグールといえば・・・魔人の中でも『不死の王』と呼ばれるほどの存在



伝説級にすごい魔人なのだ・・・



こんな場所で『ひなびている骸骨』なわけがないだろう?




「・・・」





$$$





ホビル王の首を刎ねた数日後


ハンクは王として即位する。



その直後、・・・あいつはワシを『もう必要ないから』と理不尽に封印しよったのだ。



奴にとって、ワシは恩人かもしれんが、

魔獣は魔獣ということで、どこか一線引いておった。


正義感が強いというか、融通のきかん奴だった。



あの娘子だって欲しいならば、とっとと攫ってしまえば良かったものを・・・



別れの際、

「ありがとな、ラグール」

ハンクの寂しそうな笑顔が記憶に焼き付いて離れない。





$$$





「ラグール様といえば、この城で起きたラグール様がお隠れになられた事件の逸話・・・」


魔法協会の七賢人にやられたなど所説あるのですが、





その中のひとつに『子供の低級魔法て盛大に自爆した』という説がありまして





「いや、ラグール様ほどの方が、そんな事になるはずがないと私めは思っておりますが」



「ごふ」



「・・・どうかなさいましたか?」



「何でもない」




その噂から魔人界隈では、

マヌケをやらかす事を

『ラグる』なんて呼ぶこともあるそうです。





「・・・おい・・・おい!」





「怒っておられるのですか?」

あれ、ここ笑うところなのですが・・・



・・・



「いや別に・・・ごほごほ」


骸骨は咳ばらいをしてその場を取り繕う。






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