第237話 ローベル=カーマインに足りないモノ




西の辺境の小国・・・





沢山の『トリイ』と呼ばれる朱い木の建造物と

木造の建物がたくさん立ち並ぶ土地


ここは数多くの

『レベルアップ祈祷師』を輩出している聖地だ。

この私ローベル=カーマインもそこで見習いとして修行に励むひとりだった。



レベルアップ祈祷師とは、

経験値の溜まった人々に対して不思議な術を施すことで、

その対象をより高次元の存在へ高める処置をおこなう人物の事であるが・・・



レベルアップ?



ははっ

馬鹿らしい。



そんなありもしない概念に すがって

お金を落とす人々をいっそ哀れに思っていた。




それでも・・・

私には、なぜか祈祷師としての才能があった。


特別にレーベル=カーマインという老婆から手解きを受けることとなり

背丈が伸び切る頃には、たくさんの補助魔法を習得できていた。





「もうワシからお前に教えれることはない・・・それほどにお前の魔法の才能はピカイチじゃ」





だが・・・

まだ決定的に足りないモノがある・・・





レベルアップ祈祷師は

人々がレベルアップする瞬間を見つけて最後の背中を押すことが役目じゃ

誰よりもレベルアップをするその瞬間を見ることに対して

喜び、それに飢え、それを求めねばならん。




「ローベル、お前には『その感情』が圧倒的に足りておらん」




(・・・ふっ)

確かにそれは、ざぞ私に足りていないことだろう。




そして、

修行に出るという名目で自由になった私は、

今現在、クラスティア王国の片田舎でのんびりしている。

なんとなくこの街が気に入ったのだった。



最後に会った時のレーベルの言葉を思い出す。





「レベルアップはなぁ、あるんじゃよ」





ネコをかぶっていた私のすべてを見透かしたようなあの言葉

本当に気味の悪い妖怪ババアだこと






$$$






ミストクラノスの朝、

朝靄と教会の鐘の音・・・



「おはようございます、ウツロさん」



今日は、

何か言いたげな顔をしているように見えた。



「ふふふ・・・何でもありませんよ」




「?」

ウツロは彼女の表情を訝しく思いながら、

今日も仕事へ向かう。





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