第133話【行商人編】レベルアップ祈祷師の本質




西の国、近頃この辺りを荒らしまわる盗賊団がいた。

名を『睡眠盗賊団』といい、リーダーの『イビキ=ハギシリ』は高位の睡眠魔法の使い手で、気づかぬうちに辺りの護衛を眠らせては、要人を誘拐して身代金で大儲けしているらしい・・・




こんな話も上の空で聞いていた・・・

その手の話は星の数ほど入ってくるし、

実際に出会うこともなくその地域を後にすることがほとんどだった・・・


まぁ・・・この盗賊団には・・・実際に遭遇してしまったんだが・・・





$$$





エルフの貴族との取引を終えた夜・・・

行商団の皆は安堵していた。

明日には、お坊ちゃんを貴族の屋敷まで送り届けて今回の仕事は終了だ。




ウツロは・・・

飲めないお酒を無理やり飲まされて・・・

手洗い場に籠っていた。



やっと落ち着いたと戻ってきたところで・・・

異変に気付く・・・




みんな眠っている・・・




行商団の皆は酔いつぶれて寝たのかもしれないが・・・

エルフ貴族の護衛まで死んだように眠っている・・・



「おい・・・小僧は無事じゃったか・・・」



レーベルさんだけが無事のようだった・・・

お婆さんの話、

今しがた、みんな睡眠魔法にかかってしまい・・・

魔術師風の男5人が入ってきて、エルフ貴族の坊ちゃんは誘拐されてしまったらしい・・・



なんで、お婆さんは無事なんだよ・・・



「ワシは宴会の席から抜け出して・・・ひとりで星を眺めて・・・物思いにふけっておったからな・・・」



ロマンチックかよ・・・まぁいいけど


傭兵達の頬をつねる・・・起きる気配はない・・・

「無駄じゃ・・・この魔法は強力じゃ、おそらくあと一時間は起きれぬじゃろう・・・く、なんてことじゃ・・・せっかくのワシの功績に水を差しおって・・・許さん、断じて許さん」





「奴らは東の門から逃げると話しておった・・・今ならまだ追える・・・老人のワシの足では到底追いつけん・・・お主だけが頼りじゃ・・・」






頼りにしてくれるのは、ちょっと嬉しいけど、

それは無理だ、男5人なんて相手に出来ないし、魔術師風って絶対に勝てないだろう、それに今日はもう魔力を使い切って魔力ゼロなんだが





お婆さんはふーっと長く息を吐く・・・



「・・・仕方ない・・・貴様に・・・レベルアップ祈祷師の本質を教えよう」




レベルアップ祈祷師の本質?






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レーベルは焦りながらも、

ゆっくりと話を始める・・・



レベルアップ祈祷師は、

太古の昔から脈々と受け継がれてきた、古く由緒正しき職業じゃ

過去から今まで、たくさんの人を導き、その働きによって 世界を救ってきた と聞いておる・・・今では、まがい物が溢れ、かつての名声も薄れつつあるがな・・・


レベルアップ祈祷師は何も『言葉だけ』で、相手にレベルアップしたと信じ込ませるのではない・・・

その本質は『補助魔法』にあるのじゃ・・・



『補助魔法』を対象に付与して、自身がレベルアップしたと信じ込ませる

これが・・・レベルアップ祈祷師の『真の姿』なのじゃ・・・




・・・

・・・




「・・・ってそれ結局、詐欺じゃねーかよッ」





聞け

ワシの補助魔法に『自動魔力回復オートマジック』という魔法があるそれを貴様に付与しよう

これで魔法臓器の魔力回復量が飛躍的に増大して、一定時間魔法が使いたい放題じゃ・・・


(まぁ・・・翌日、副作用で、めっちゃ辛いんじゃが・・・)



「今なんか小声で言いました?」

・・・いや、何でもない





貴様は言ったな?





『魔力がないから弱い』と

つまり・・・




『魔力があれば強い』ということであろう?

論理的に何の矛盾もあるまい




え?

んん・・・そうかもしれないな・・・





「よし話は決まった・・・奴らを倒して来い、頼んだぞ」





自動魔力回復オートマジック!!





俺は・・・

またしても、レーベルさんの話術にのせられてしまっていた。


冷静に考えたら・・・そんなわけないんだが・・・

その時は、その言葉を信じきっていたんだ・・・




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