第131話【行商人編】当たらない風切りの対処法②
レベルアップすれば、もっと広い景色を見ることができる・・・
この頃、魔獣対処に手が足りなくなると、
傭兵達のフォローに行かされることも多くなった。
ゴブリン盗賊に襲われる行商団、
護衛の部隊が奮戦して こらえている。
ウツロも剣を持って一匹のゴブリンと対峙した。
相手は剣と盾を持っている・・・動きが素早い
それに・・・このゴブリンは『風切り』を知ってるゴブリンだった・・・
初見のウツロの風切りを簡単に避けてしまう・・・
3回目の風切りを放つ・・・剣がスカッと空を切る
(あ・・・発動できてない・・・ミスった)
ミスにもかかわらず・・・ゴブリンは後ろに飛び退く。
そうか・・・『撃つ』と思ったから避けた・・・
フェイントってことか・・・
ウツロは意地悪く何度か剣を振る・・・
そのたびにジャンプしたり、後ろに飛び退く相手のゴブリン・・・
くくく・・・愉快愉快
ゴブリンは騙されたことに気づいて悔しそうだ。
もう魔力の残りは少ないけど・・・
フェイントのおかげで、俄然こっちの方が精神的に優位に立ってるぞ・・・
ゴブリンの方も対抗策に出る。
あえて、横ステップを入れてウツロをかく乱する・・・
この・・・ちょこまかと・・・
こっちが狙い辛いってわかってるのかな・・・賢い
読みあいに 次ぐ 読みあい・・・
じりじりと膠着状態になった・・・
お互いの額に汗がにじむ・・・
ブォオオオオオオオオオ
鳴り響く笛の音
ゴブリンの撤退の合図のようだった・・・
$$$
砂利道を行商団はゆっくりと進む。
フェイント・・・
そんな手もあるんだな・・・
『風切りを知っている敵』にも対処方が見つかったのは収穫だったな・・・
少しだけ心が充実した気分になる。
同時に・・・
『閉塞感』も感じた。
この辺りで一番弱い魔獣のゴブリンに対して
『自分にはもうこの程度しか成長の余地がないのだ』という閉塞感・・・
まぁ・・・フェイントなんて・・・ただの小細工だよな・・・
他の傭兵達に比べて『おままごと』 のような自分の魔法・・・
きっと魔力があれば・・・もっと色々な魔法を考えることができたし、
まだまだ未知数な自分の成長に希望を持つことができたはずなんだ・・・
ふと、横をみるとレーベル婆さんが近くを歩いていた・・・
何か言いたそうな顔でこちらを見ている・・・
レーベル「ふふふ・・・小僧・・・つまらないことを考えている顔だな・・・『自分の底など知れている』という顔だ・・・そんな時こそ・・・早く経験値を溜めてレベルアップすることをお勧めするぞ?」
レベルアップすれば・・・きっと・・・もっと広い景色を見ることができる
そんなセリフを並べるレーベル婆さん・・・
何と言われようが、ウツロの気持ちがブレることはない。
(無駄だ、俺はもう レベルアップなんて信じない・・・確かにあるのは、『戦闘慣れ』と『小細工』と『どうにもならない魔力格差』だけなんだよ)
空はたくさんの雲がひしめいていた・・・
大きな黒い雲がこちらへ来るのが見える・・・
雨になるかもしれなかった・・・
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