第17話 ミラージュ=イエール その3
ウツロは目を覚ます。
そこはいつもの下宿屋の天井だった。
それにしても、
昨日は死にかけたな・・・
あの爆弾娘から生き永らえることが出来たのは奇跡としか言いようがない。
ああ、疲れた・・・
コボルトの任務も達成したし、今日は体調不良とか言い訳して休もう。
ああ、二度寝素晴らしい。
ドン
部屋の扉が勢いよく開く。
「ウツロ先輩!生きてますか!!」
ミラだった・・・相変わらず、朝に聞くと頭にひびく声だな・・・
ウツロはベットから身を起こす。
ミラは涙目になって、ウツロに飛びつく。
ミラ「良かった・・・誰も見ていないところで静かに『事切れて』るんじゃないかと心配しましたよ。」
俺は猫かなんかか・・・
ウツロは柔らかい何かが当たっていることに気づく。
胸が、胸が、胸が当たってる・・・
ウツロはミラを遠ざける。
ミラがベットの上で移動すると、スカートからふとももがチラチラ見えて、
なおいっそう 目のやり場がない。
ウツロ「・・・大丈夫だから・・・ほら、怪我もないし。」
ミラはじーっとウツロを見る。
ミラ「え」
ミラ「・・・『闇』の目の私と対峙して・・・ほぼ無傷なんて・・・すごい」
うわ・・・このひと・・・本当に人間? みたいな目をして
若干引き気味のミラ
ウツロ(そのセリフすごくおかしいよな・・・わかってるよな・・・)
$$$
ミラは紅茶の葉をお湯に入れる。
お菓子を口に入れ、紅茶を飲む。熱かったのかあちっと舌を出す。
ごく自然にひとんちの紅茶とお菓子を・・・
彼女は微かにふーっとため息をついて静かに話し始める。
ミラ「昨日は・・・本当にごめんなさい。『闇』の目は1年に出るか出ないかのレベルのレアな魔法だったんです。」
ウツロ(俺が『くじ運』 悪かったみたいな言い方はやめろ)
ミラ「最近凹むことが多かったから・・・『闇』が出ちゃったのかな・・・」
ウツロ(・・・いや知らんけど)
ミラ「・・・」
ウツロ「・・・」
ミラはチラチラと『慰めて欲しい』『励まして欲しい』というような目線をこちらに送る。
ウツロは無言で立ち上がる。
そして、ミラの肩をがしっと掴む。
ミラ「・・・え・・・え・・・先輩?・・・まずいです・・・そんな昼間から」
戸惑うミラ
ウツロは、
そのまま彼女を部屋から追い出す。
ミラ(・・・あれ?)
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エレノールさんから聞いた話。
ミラスロットは彼女が物心つく前から自然に使うことが出来た。
彼女の特殊な成長環境が生み出した呪いのような魔法。
魔法協会が保護していなければ、彼女が討伐対象になっていた可能性すらあったそうだ。
もっとも、今は魔法協会も彼女の扱いに困っているらしいが、
この場合、お説教するのが正しいんだろうか。
俺は説教が嫌いだ。あーそれは、俺が何度もお説教され過ぎてうんざりしているからなんだが・・・
非効率だし、生産性ないし、
もっと単純に、『仕事を完了して、任務を全うした。』それでいい気がする。
しかも、一週間かかるはずだったコボルト討伐を1日で終わらせたんだ、残りの日ずっとサボっていられる、素晴らしい。
という内容をミラにも話した。
ウツロ「ほら、もっと胸張れよ。」
ミラ「先輩・・・こんな私でも・・・また、一緒に仕事をしてくれますか?」
「・・・え・・・それは・・・ちょっと・・・」
ウツロの目が泳ぐ。
ミラは怒ってぽかぽか肩を叩いてきた。
ごめん、正直に言うと、あんまり組みたくない・・・
それから、3件ほど仕事をもらった。研修終了に必要不可欠で、研修スケジュールも 押している ので急いでくれとのこと
『闇』以外の魔法も危なっかしいし、何度か死にかけた。
それ以上にこの子の挙動が危ない。危機感なさすぎ、フォローしなきゃ死んでるぞ。
最終日、ミラはぼろぼろ涙をこぼして泣いていたっけ、
ミラ「やだ・・・ウツロ先輩を・・・連れて帰る。」
ケーリ―「我儘言わないで」
俺は捨て猫か
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支部長はご満悦だった。
研修受け入れで実績を残すと出世の点数になるらしい。
支部長「はは、ウツロ君ありがとう、約束通り、有給を3日増やしてあげよう。」
ウツロはその言葉も耳に入らないほどに満身創痍だった。
ウツロ「有給3日、明日からとっていいですか?」
・・・疲れた。
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