第15話 ミラージュ=イエール
「今日から3ヵ月お世話になります。ミラージュ=イエールです☆」
魔法協会本部所属の魔法使いには、
魔獣討伐研修義務が存在して、たまに本部の魔法使いが来ることがある。たいていは本部の魔獣討伐部に配属希望を出すのが通例らしい。誰が好き好んでこの辺境の北支部まで来るものか、そんなことを言うと北支部が監獄みたいに聞こえるだろうか。
ウツロは北支部がそこまで嫌いではなかった。北支部は人間関係が『希薄』で馴染みやすいし、規則もゆるいし。
最近、またひとり魔女が研修に来ているらしい。
ウツロは討伐業務に出かけていて面識はなかったが、同僚から魔法の書で噂だけは聞いていた。
自己紹介でミラージュ=イエールと名乗った彼女は若くて美人でとても豊満な体つきをしているそうだ。ケーリ―=エクセルと魔法学校の同期で、ミラージュはケーリ―にべたべた引っ付いているらしい。そのたびに彼女の豊満な胸が背の低いケーリ―の顔に当たって、ケーリ―が複雑な顔をしているのが傑作だと書かれていた。
ウツロ(・・・ケーリ―さん、可哀想に)
持たざる者っていうのは辛いよねぇ
さて、今回の討伐任務はグランドバイパーだった。
カッコいい名前がついているが、まあ、要するに大きな蛇だ。
ウツロはお手製のカカシを担ぎながら、草むらを音を立てながら探索する。
グランドバイパーは草むらのどこから飛びかかってくるかわからないので、重装備で盾を構えるか、魔法障壁を展開するかが一般的なセオリーである。重装備は持ってくるのが面倒で、魔法障壁などという魔力垂れ流しの魔法はウツロには辛かった。よって、カカシを使うという着地点に落ち着いた訳である。
空が真っ青でとても綺麗だった。風も爽やかでいいなぁ・・・
ガザガザッ
音が鳴った次の瞬間、カカシの首が飛ぶ。
ウツロ(釣れた)
あーカカシなかったら即死だな・・・
すかさず、『風切り』で蛇の首を落とす。ふー逃がさなくて良かった。
死体を念写して、一考・・・
蛇のしっぽを背負って持って帰ることにした。
グランドバイパーは薬の材料になったりするらしいから喜ばれるだろう。
魔法協会への高い討伐費の足しにしてもらおう。
$$$
北支部の街へ帰ってきた。
エレノールさんから『仕事が早くて助かります(^-^)』という趣旨のメッセージが来て上機嫌だった。
ふふふ、また、エレノールさんの好感度を上げてしまったな・・・会ったことないけど
北支部の事務所の扉を開けるとみんな暗い顔をしていた。
支部長がウツロの顔を見るなり声をかけた。
助かったみたいな顔をしている。
支部長「ウツロ君、以前、君は部隊を組みたいと言っていたね。言っていたよね」
ウツロ「はぁ・・・」
支部長「よし、研修中の魔女のミラージュ=イエール君を 君の下につけよう。良かったな、念願の部隊編成だぞ!」
事務所の空気が明るくなる。
「ウツロありがとう」
「ウツロはやっぱり頼りになるなぁ」
という称賛の声があがる。
ああ、嫌な予感しかしない。
ウツロ「えー、あー、エレノールさんからまた別の仕事の依頼が来てまして・・・」
支部長「それは大丈夫、彼女には先に話を通してあるから・・・」
ウツロ(用意周到・・・だと・・・これは逃げなければまずい)
ウツロ「いやー疲れたから有給とりたいな・・・なんて」
支部長「君、有給残り少なかったよね。この仕事を受けてくれたら、あと3日ぐらい増やしてあげてもいいんだけど」
ウツロ「・・・え・・・」
受けてしまった
扱いづらい新人の相手を1ヵ月する程度、余裕、余裕
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます