第7話 不測の事態の対処方法


スライム討伐任務 継続中



村までやっとたどり着いた。

この村はスライムの群生地に近く、顔を出すことが多かった。

顔見知りと言っても魔法協会の高価な退治費に対して良く思っていないので、彼らとの関係は険悪であった。



さて、今日もさらっと討伐して帰りますか・・・



スライム群生地の森の前に小さな子供たちがたむろしていた。



「あ、スライムのひとだ・・・」

「ああ、良く見るスライムのひと・・・」

「スライムと戯れるのが仕事のひとだ・・・」



ああ・・・ひどい言い様だ・・・

純粋な子供の言葉はなおいっそう心にダメージを与える。




ウツロ「いいから・・・お前ら家に帰ってじっとしてろ」




強い語気で言ってみた。子供の安全のためここは大人として怒らないと



「わー、スライムのひとが怒ってる」

「怒ってる・・・あはは」



子供たちは意に返さないようだった。

まあいいか、このあたりの子はスライムの扱いを良く知ってるし・・・




$$$




この森は・・・半分は遺跡のようなレンガの建物が続く。

大昔はどこかの国の城と街があったらしいが今では森に飲まれてしまっている。



スライムは物陰に隠れていることが多い。

俺の熟練のカンだと多分あの辺に・・・いた。



こちらに気づいて ぽよんぽよん と跳ねて攻撃してくるスライムを適度にはじき返しつつ コアの位置をよく見て・・・



ウツロ(・・・ここだ)



剣をスライムに突き刺す。

スライムはドロリと溶けて地面の水たまりになった。


やっぱり・・・すごい発見だと思うんだけどな。

『魔法協会年度末表彰』ものだよ絶対




それにしても・・・

なんだか森の様子がおかしいな・・・まるで何かに怯えているような・・・

遠くで木がバキバキと折れて巨大な何かが通り過ぎる音がした。





【不測の事態】

魔法協会の規則では不測の事態が起こった場合は1にも2にもまず『報告せよ』とある。


特にウツロのような魔物討伐任務中は予想も付かない上位個体が現れることも少なくない。そんな上位個体に不用意に手を出して何も残さず死んだら、後の対応が非常に困ることになる・・・


なるほどそれは一理あると



新人の頃、

ウツロは、異変を感じて、すぐに『異変が起こっています』と魔法の書(メール)で報告してみた。



++++++++++++++++

ウツロ:異変が起こっています。

上司:どんな異変だ?

ウツロ:森の様子がおかしいです。まるで何かに怯えているような・・・

上司:・・・は?

++++++++++++++++

この報告のあとウツロは『報告は明瞭に』と こっぴどく叱られることになる。



『えーい、埒が明かん。実際に見てこい。』

『言葉じゃわからん。念写して送れ。』



結局、その上位個体を念写しに行く羽目になり・・・


上位個体に見つかり、

奴を怒らせて命辛々逃げたことがあった。

あの状況を生き延びたことは奇跡だったとしか言いようがない。



さらに言うなら、

魔法の書の念写の望遠機能はスペックが低いので

かなり近づかないとキレイに撮れない。

ああ、これもう上位個体に不用意に手を出していることと同義ではないだろうか・・・



さて、

今回はどんな事態になるかわからない。



一応

『上位個体発生?確認します。』

とエレノールさんに報告して、巨大な何かがいる方向へ走り出す。



キレイに撮影したら、お役御免だ。

あとは魔法協会の別部隊に任せよう・・・

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