第6話 スライム討伐のスペシャリスト



ミスタースライム




本日の仕事:スライム討伐

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ウツロ:スライムは『雷の魔法使い』がいないと厳しくないですか

エレノール:上層部の方々は

      『あなただったら大丈夫』とおっしゃっていましたが、

       雷の魔法使いは今全員出払っているのです。

       ご無理を言って申し訳ありませんがお願いします。

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くっ・・・

女神エレノールさんのためなら致し方ないか・・・会ったことはないけれど



$$$



世の中には『労力が対価に見合わない仕事』というものが存在する。

スライム討伐はその最たるものであると思う。理由は2つだ。


①危険度が少なく、討伐しても評価の対象になり辛い。(誰も褒めてくれない。)

②弱点がよくわからない。(しかも、分裂する奴もいる)


この弱点がよくわからないというのが最も厄介な点である。基本奴らは打撃や斬撃が通らず炎も効きづらい。雷の魔法が有効なのだが、雷属性を使える魔法使いはレアで戦闘性能が高いのでスライムごときに回してもらえない。


実は内部にコアがあるのだが、見つけるのは難しかった。

まあ、時間はかかるが、剣をふり続けていればいつかは倒せるので

スライム討伐は剣士の仕事になっている。




新人の頃、何も知らずにスライム討伐に任命された。

暗い街の地下水路で奴と戦う。俺は何時間も剣をふり続けてようやく1体の討伐に成功した。周りの仕事仲間の小馬鹿にしたような顔を今でも忘れない。


それから何体も何体もスライムを討伐する日々が続く。仕事が嫌になって周りの者に「疲れた顔しているけど大丈夫?」って声をかけられるレベルになった。




そんな時、奴らの弱点に気づいてしまった・・・




スライムの中心には『コアのように見える球体』があるが、そこはダミーである。ある一定の動きをする時のダミーの動きを見つつ、その場所を突けばそこがスライムが死亡することを発見した。


これは世紀の大発見だ。


これで世界はスライムの恐怖におびえることはなくなる。魔法協会の剣士も枕を高くして寝ることができる。




ウツロ「ダミーコアに合わせて・・・こう動いたときに・・・こうナナメに突けば・・・ほら、こんなに簡単に退治できるんです。」




俺は皆にその事実を説明した。だが、誰一人理解してくれなかった。

そして・・・スライム討伐の仕事がさらに増えた・・・




今では、

魔法協会の本部の一部で俺のことを『ミスタースライム』と呼ぶ者もいるらしい。




ああ、理不尽だ。

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