第24話 三つ目の星

 ㅤ三つ目の星は、黄色い星。いざ入ってみると、宇宙に対応した船や服があってもやや寒く感じる。

 ㅤそして辺り一面土。ここまで黄色い土が広がる景色を初めて見たけど、綺麗に感じる。美しく思う。


 ㅤそこでは一人の女の子に出会った。

「ねぇ、ワタシ、ある人を探してるんだけど」

「あるひとぉ?」

「こんな手紙を書いてくれた人なんだけど、心当たりない?」

 ㅤそういってワタシは、白い封筒と、中の文章をチラッと見せた。

「しらない」

「そっか、そうだよね」

 ㅤそもそも、新たな星に入って、いきなり手紙を見せて星の人が見つかるなんてことはないと思う。だから、その星の風土を感じることにした。


 ㅤあくまで直感に頼る部分が多いけど、この星にあの文章を書く人が存在するかどうか、思い描いてみる。いなさそうだったら去る。いそうだったら徹底的に探す。そうしようと思った。


「ねぇ、この星で大事にしてることってなに」

 ㅤ女の子にそう聞くと、口ごもった。いきなり難しいこと聞いちゃったかなと謝ろうとすると、

「わ!」

って答えた。わって何? ㅤと尋ねたら、

「わはわだよ。わっかさん」

 ㅤそう言って、頭の上で丸、すなわち輪っかを作った。可愛かった。


「この星では、わを大事にしてるの?」

「うん!ㅤみんなわになってくらさないと、いきていけないんだって」

 ㅤ純粋そうな目を、キラキラさせながら教えてくれた。もしかしたらこの星には、星の人がいるかもしれない。そう思ったけど、

「おねぇちゃん、きて!」

 ㅤ突然腕を掴まえられて、引きずられるように走ると、わらで出来たような家の裏手で、大人も子供も手を繋ぎ、輪を作って目を閉じていた。

 ㅤその中に、ワタシも、その女の子も入るという雰囲気で、中に混ぜてもらった。


「我々がこの星にいるのは、決して美しいことではないかもしれない。だからといって我々が汚らわしいというわけじゃない。土がもたらす栄養と我々の知恵。大切にして、この地で美しく暮らそう」


 ㅤこの場所のおさのような、背の高い男性がそう言い終えると、皆が目を開けた。そして、輪の真ん中にジャガイモみたいな野菜が束になって置いてあった。


「これ、お前も食べていいぞ」

 ㅤ長らしき人に手渡された小さな野菜。いただきますと言ってからかじった。ホロ甘くて、自然の味がする。少しだけ砂つぶの食感があるけど、美味しい。


「あの、ありがとうございます」

「いいんだ。この星が大事にしてるのは。全ての人が手を繋ぐ。働き者も怠け者も、善人も悪人も。大事にみんなで暮らすんだ」

 ㅤその言葉に、少し怖さも覚えた。ここにいる人たちはきっと、皆良い人たちに思えるけど、そうでなくても一緒にいるという覚悟が目の中に見えた。


 ㅤだけどきっと、星の人にはそういう覚悟はないはず。ただの勘だけど、あの人の目の中には、きっと孤独が見える。寂しさがにじむ。


 ㅤこの星にも、星の人はいないだろう。だからワタシは次を目指す。心にちょっと、わっかさんを作って。

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