第5話 なんとかなるか?

 まだ暗いうちから今日も頑張らなければならない。ロボットのメンテナンスから始まり、ロボットのセットが毎日の大事な私の仕事である。

「あなた、今日も入ってるわよ。ステラ・キントン・カプリス・ゴルゴ足りるかしら。」妻は朝食の準備ができたようで、今日の発注データを見ながらいつものようにうれしそうに声を響かせている。

 異動を断り退職したことは正解だったようである。自宅を売って田舎に土地を購入し、イタリア野菜専門の農家をはじめた。農業のノウハウはないがロボットがすべてやってくれるのだからメンテナンスだけできればどんな野菜でも効率よく栽培出来る。日本に限らず海外からも注文をいただいているのだが、到着時の食べごろを計算して届けていることも好評である。それもロボットが自動で計算してすべてやってくれるのだからすごい。

 今までの仕事はなくなったが、ロボットと共生する仕事は無限に拡がる可能性がある。来月にはお世話になった元部長も近所に引っ越してくる、部長はいろいろな種類のトマトを栽培するらしい。ロボットのメンテナンスは私に助けてほしいようだが近くに知り合いが増えることは嬉しいことだから一緒に頑張っていくつもりである。ロボットたちに我々の居場所をすべて奪われてしまうのではないかとネガティブになっていたが、我々が居場所を創らなければいけないことを改めて思い知らされた。どんな状況でも考え、あきらめてはならないということを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の仕事がなくなる日 麗永遠 @tadao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る