第12話

 一通りポーズを決めたユキは、ぽつり。


「お兄ちゃんのにおいがする……」


 な、なに言い出すんだ、ユキ。


「愛されているね、お兄ちゃん」


 神さままで、何言うんだよ。なんかすっごい気恥ずかしいというか。


「それにしても、お兄ちゃん、こんな格好がいいのかな?」


 オレが考えたんだからな、そりゃ最高に萌え萌えだよ!


「こすぷれ、で、こういう格好している、というのをメールで送ったら、ユキのこと、好きになってくれるかな……くれるよね」


 そういうなり、こうべを巡らすユキ。


「ケータイ、どこだっけ? 変身したらわからなくなっちゃった」


「あ、スマホはポシェットの中にあるから」


 降ろしたユキの腕を、そっとポシェットの中に潜り込ませる。


 スマホを確認し、スイッチを押すユキ。ディスプレイの中のオレを見て、彼女は微笑む。


 カメラを起動させ、腕を伸ばすユキ。ブレないように、オレはしっかりとスマホをホールドさせた。


 自撮りするユキ。


「いままでで、いちばんかわいいかも」


 電子音と共に静止した画面を見入るユキ。魔法少女に変身した、バストアップの妹が、そこにはいた。


「えーっと、『お兄ちゃん、こすぷれ、してみました。じゃーん、魔法少女だよ』と……送信!」


「届いたよ! 見る?」


 そういって、オレのほうにオレの携帯を押し付けてくる駄女神。


「代わりに返信しておくね。『コスチュームよりも、ユキ自身がかわいいな』と」


 おい、ちょっと待てよ、邪神。何でオレのデザインセンスをディスっているんだよ?


 その思いもむなしく、ユキのスマホにメールが届く。


「お兄ちゃん……」


 オレのむねの中の、ユキの小さなむねめられた心臓しんんぞうが、激しく脈打みゃくうつ。火照ほてった体の熱がそれに重なる。

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