第11話

 当の本人、ユキはようやく、変身中に閉じていたまぶたを開く。アニメじゃアップで描写されるシーンだ。


「えっ、何、これ?」


 こうべを巡らせ、自分の姿を確認するユキ。いてっ。オレの首が意図しないほうに曲がる。


「変身? この杖とか……魔法少女?」


 鏡の前までやってきたユキは、ファッションショーのように様々なポーズをとる。杖を頭上へかかげたり、うでひろげたり、こしをかがめたり、くるっと体をまわしたり。


 そのたびに、俺の体に負担がかかる。


 そーいや、ユキはJ・S女子小学生モデルだったな。いつも仕事でこんなことしているのかな?


 うわ、何? ユキがこしのあたりをつまむ。今度は、むね。オレのむねむな、ユキよ。


「?!?」


 反射的にのけぞってしまったオレ。


「ヒロ、勝手に動いちゃダメじゃない。コスチュームが勝手に動いちゃ、ダメでしょ」


 オレに叱責してくる駄女神。それなら、オレをコスチュームにするなよ、だ。


 ラッキースケベ、なんていうアニメ展開がどっかでないかな、なんてどこかで思っていたが、他人にむねまれることがこんなに嫌なものなら、あきらめる。


 男子諸君よ、セクハラは絶対ダメだ。許されざる行為だ。やられて嫌なものはやっちゃだめだ。

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