第9話

「ねぇ、ヒロ?」


 なんだ?


「これは何でしょう?」


 お前、なんで俺の携帯持っているんだよ。わるかったな、ガラケーで。


 奴はオレの質問を無視し、せわしくキーを打ち込んでいく。


 すると、ユキの携帯電話が鳴り始める。


「メール? お兄ちゃん、から♡」


 アニソンの着信音にユキは色めき立つと、あわててディスプレイをのぞき込む。


 そういえば、ユキにメール打った事なんてほとんどなかったな。


「えーっと」


 続けて口にするメールの文面に呼応こおうするかのごとく、ユキの胸元むなもとに収められたオレの体……コンパクトが光を放ち、開く。中に収められていたのは、雪の結晶けっしょうした金細工と、その中央に収められた、ダイヤモンドのような透明な宝石。


 ダイヤモンドダストのような輝きがそこから放たれると、全裸になったユキの体にまとわりつく。体は雪化粧を纏ったように真っ白に変わっていく。


「ユキちゃんをちゃんと変身させて!」


 お、おう?


 えーっと、まずはノースリーブの体に密着したやつ。色は、清楚せいそさを示す純白。そこにあわいブルーのラインが胸元むなもとまで伸びていく。


 スカートは半透明のミニ。肩当ても半透明のブルー。体から少し浮いて存在ししているのが、なんとも魔法っぽい。


 マント、ブーツ、グローブ、ポシェット、キャップ……


 それらをを装備させ、完了っと。


「ちょっと、ヒロ。巨乳設定が反映されてないけど?」


 素材がユキなんだからしかたないだろ。


「胸パッド入れるよ。あと、瞳のカラーコンタクト。髪はアップサイドの金髪に染めたツインテールにしておくよ」


 なんか、魔法少女、という設定からかけ離れた……コスプレみたいな話になってきてるけど。とにかくユキは、巨乳、金髪、青い瞳、色白、というアニメのキャラクターみたいな姿に変身していく。


 低身長だけはそのまま、だけど。


「そうだよ、コスプレ。ヒロが魔法少女、のコスチューム。ユキはそれを着ているだけ」


 なに、その設定? 俺の体の中に妹が入った??

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