第8話

「そんなこと言うんだ。人のこと言えるのかな?」


 そ、それは……!


 オレが書いた黒歴史ノート!!


 二年ほど前、アニメっぽい設定の話を考えたのはいいが、ノートに書き留めただけで満足して、それっきりになっていた、異世界ラブコメ・ファンタジーの設定。


「このヒロインの女の子、かわいいよね? 絵は下手だけど」


 そう言って、メモした線画を目の前に突き出してくる。


 恥ずかしいから、どこかへ仕舞しまってくれ。


「どことなく、ユキちゃんっぽくない?」


 関係ないって! ユキを巻き込むなよ!!


「ヒロの書いた設定で、物語が紡がれるなら、オタク冥利に尽きるよね!」


 ちょっと待て!


「さぁ、お兄ちゃん。ユキちゃんをLOVEラブの力で変身させてあげるのよ。二人の初めての共同作業!」


 変なこと言うなよ! つまりアレか、妹をオレの書いた設定どおりの魔法少女に変身させろ、ってことか?


「そうそう」


 でも、魔法少女じゃないんだが……。俺に冷たいし、名前が『ユキ』だから、雪女という設定だけど。


「ひどいこと言うね、ヒロ。ユキちゃんが聞いたら泣くよ……」


 いやいや、凛としてかっこよさそうだろ、なあ、雪女。


「あくまで、神さまであるボクのしもべだから、雪のちからをもった天使、ということにしておくからね」


 はい、はい、はい。


 ……って、お前の下僕かよ。


「でも、ボクの力がないと戦えないし、変身もできないよね」


 はいはい、わかったから、顔、近づけるのやめてくれないか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る