第3話

「君は、えーっと、コレだよ」


 彼女は、杖の彫像ちょうぞうのくちばしでコンパクトを叩く。


 頭のあたりに軽く、金属質のつめたさが伝わる


「君は今日から魔法少女!」


 あまりにも胡散臭うさんくさい言葉に、俺は吹き出しそうになった。


 ……魔法少女、はないだろ……。


 たしかに、このコンパクトは魔法少女ものアニメで、主人公の少女が変身に使っていそうな代物シロモノだけど。


 ちょっと待て。


 変身で女体化、とかいうはまだ許せる。転生して女性に生まれ変わって、という設定もネット上がりなら理解できる。面倒だから、気がついたら魔法少女のコスチューム、というのもアニメ的にはあり得ないが、第一話ならアリかもしれない。


 しかし、鏡に映っているのが、俺、だよな。このコンパクト。


「ボクの角度から見たら、映ってないよ」


 いや、そんな問題じゃないから。


 主人公が人間ですらない、……物……、って。


 女児向けにしろ、オタク向けにしろ、自分の魔法で変身するフリフリ衣装の女の子、という線は外せないだろ。女の子、どこだよ。


「いや、最近、神さまに能力もらって転生してもらう話、多いよね」


 ネット小説とか、それを原作にしたアニメとか?


「そうそう。ヒロも、ボクが魔法少女に変身させる能力を与えて、転生させたんだよ」


 無機物むきぶつはありえないだろ。


 まだ動くだけ、女装のほうがマシだ。

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