第参刀〜双子の過去・前編〜

心地良い秋も終わり掛け、冬が起き出し始めた神無月。

双子はある賭けを持ち掛けられていた。持ち掛けている相手は同じ隊士の夜月白やつきしろ東雲凛斗しののめりんとだ。

四人とも巡察は夜なので昼は少し暇なのだ。

「なァ勝負しようぜ?」

「お願いします、勝負して下さい!」

「「………………………なんで俺らな訳? 他にも居るだろ、強い奴も暇そうな奴も……」」

「俺はお前らと勝負がしたいんだ!」

「僕もお二人と勝負がしたいんです!」

「「………………………面倒臭ェ……」」

「そう言わずに、な? やろうぜ?」

「そう仰らずにやりましょう?」

そうやって熱心に双子に勝負を持ち掛けるが当の双子は、面倒臭そうに渋るだけだ。

「な、頼む! このとーり!」

「お願いします!」

「「…………………………嫌だ」」

二人が揃って頭を下げても双子は嫌そうに顔を顰めて拒絶するばかりだ。

二人が持ち掛けている賭けは、自分たちと勝負して、勝った方の言う事を一つだけ聴く。

というモノだった。双子はとても嫌そうに顔を顰めて突っ撥ねる。

「むぅ……」

「何がそんなに嫌なんだよ?」

「「…………………………試合なんざ君ら二人で出来るだろ、俺らを巻き込むな」」

「エエ〜……」

「そんな息ピッタリで言う事かよ……」

二人は飽きれたが、双子の言い分は正論なのだ。試合は二人居れば出来る。という事は双子を誘わなくても試合自体は出来るのだ。

だが……

「なァ頼む!」

「椿さん達と手合わせしたいんです!」

「「…………………………嫌だって……」」

「…………何やってんだ?」

「あ、副長」

四人でワーワー言ってると副長である土方歳三が不思議そうに声を掛けてきた。

「実は斯々然々カクカクシカジカで……」

「お二人に勝負を持ち掛けていた所なんです」

「ふーん……良いじゃねぇかやってやりゃあよ?」

「「…………………………面倒臭い」」

「おいおい……」

あくまで双子は勝負を受ける気は無いらしい。

よく見ると二人揃って眉間に皺を寄せている。相当賭けに乗るのが嫌らしい。

「ん〜……ってかお前らは寝なくて良いのか? 夜、巡察だろう?」

「勝負してから寝ようかなぁって……」

「勝負してから寝ても遅くは無いかと思って……」

「「…………………………半刻寝れば事足りる」」

「千差万別だなオイ……けど双子は受ける気無さそうだし、少し寝てきたらどうだ? 寝て無くて辛いのはお前らだろう?」

「むぅ……そうッスね寝てきます」

「そうですねぇ……じゃあ少し寝てきます」

「「…………………………行ってらっしゃい」」

「お前らは寝ないのかよ!?」

「お二人は寝ないんですか!?」

「「…………………………半刻寝れば事足りるからな……」」

「ほら行った行った」

二人は土方の提案に素直に従って部屋に仮眠しに行った。……やはりと言うか双子は仮眠に行かなかったが。

「お前らは行かなくて良いのか?」

「「…………………………後で寝るので……」」

「…………そうか、無理はするんじゃねぇぞ?」

「「…………………………して無いで……」」

「してるから言ってんだろうが、察しろ其処は」

言い掛けた所で遮られた。土方副長の鋭い視線が身体に突き刺さる。

「お前ら新撰組ココに入ってから隊士とまともな付き合いしてねぇだろ。まるで自分達は此処に居ちゃいけねぇ存在だって思ってるかの様にな」

「「…………………………ソレは……」」

「今だってそうだろ。勝負くらい受けてやりゃあ良いのに断る。何がそんなに嫌なんだよ?」

「「…………………………それ、は……」」

双子は言いづらそうに土方から顔を背けた。

「お前らには聴きたい事があったんだ、お前ら過去に何があった?」

「「…………………………気持ちの良い話じゃ、無いですよ?」」

双子は観念した様にポツポツと話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る