第2話
『年表』
古代カノン共和王国・元年 「古代カノン王国の最後の王ダルギニスが、その圧政や暴虐
から貴族達や市民の反攻により追放。カノン共和王国が建
国される。執政官2名が王に代わって、元老院や市民集会
と共に統治する。執政官の期限は1年」
9年 「ザヴィニ族との戦争が苛烈(かれつ)となり、初の独裁官が任命され る。独裁官とは執政官2名の上位であり、期限は半年。
即断即決が求められる火急の場合に、任命される。ある意味、共和 制に反する存在とも言えた。
この時に任命された独裁官デイトゥスは執政官から昇格する形で、 その役職についた貴族であった」
12年 「先王ダルギニス、復讐の為、周辺諸部族を集め、戦争を起こす。 第一次カノン周辺諸部族戦争、勃発(ぼっぱつ)」
14年 「レグルス湖での戦いで、後のゴリオラヌスの活躍もあり、カノン勝 利。先王ダルギニス、後のゴリオラヌスに討たれるも、その顔は死 の間際に魔導で焼けて正体が分からなくなる。なので、ゴリオラヌス は裏切りの先王を討ち取ったという戦功は正式には得れなかった。 特に、当時の彼は17歳であり、そんな少年に多大な戦利品や役職 を与える事は出来なかった。故に、彼が将軍となるのも、後の事と なる。
主導者のダルギニスが戦死するも、周辺諸部族は戦争を続ける意 志を見せ、戦争は続いていく」
15年 「一人の老人から反元老院の運動が巻き起こる。便宜的に言うなら ば、一種のストライキである。老人は立派に戦(いくさ)を務めた歴戦 の兵士であったが、戦争から帰って見れば、自らの家や農地は戦 火で焼け、家畜なども根こそぎ何者かに奪われていた。再建の為 に、老人は借金をしたが、その利息が高すぎ、払いきれずに、残さ れたわずかな財産まで没収された上、自らの身体まで債権者の持 ち物とされてしまった。すなわち、農奴として、奴隷よりも酷いかも知 れない扱いを受けているのだと言う。怒り狂った民衆は、元老院の 議員に押し寄せて、一触即発の状態に陥った。
しかも、悪い事に、周辺諸部族が押し寄せてきたのだ。
仕方なしに、執政官プリウス・ゼヴィリスは民衆に次のように約束し た。《執政官の召集に応じた兵士達の身体を束縛する事を禁ずる。 また、兵士達が不在の間に、その私財を没収したり売却したりする 事も禁ずる》と。
これを聞き、民衆は納得し、執政官の名の下に喜んで戦に馳(は)せ 参じた。
だが、数多の戦争を経て、凱旋(がいせん)して戻ってみると、兵士 達が直面したのは最悪の裏切りだった。もう一人の執政官アビウ ス・グラディウスによる拒否権・干渉権が発動され、約束された法案 は反故(ほご)にされたのだった。執政官の出したいかなる法案も、 もう片方の執政官が合意した上で無ければ、許されないのだった。
怒りを通り越し失望した民衆は、7つ丘の内の2つ丘に居座り、出て こようとしなかった。
そして、これ幸いと外敵なる周辺部族はカノンに攻め寄せ、両執政 官は市民兵士を召集しようとするも、民衆は丘に居座るのみであ る。
こうして、最初のストライキとも呼べる運動が行われた。
(ただし、実際には平民が夜間集会を二つの丘で開いただけとも言 われており、しかも、それは翌年の16年に両執政官が選ばれた時 であるとも言う。平民からすると、新たな執政官が何者か分からず、 不満があったのだろう)」
16年 「あまりの混沌とした状況に、独裁官メニウス・ヴァレリウスが任命 される。彼は民衆派であり、彼の人徳により民衆は丘から降りて来 て、再び外敵と戦った。さらに、メニウス・ヴァリリウスは独裁官の職 を返還した後に、民衆の為に、借金返済が不可能である場合でも、 身体の自由を束縛する事を禁じた法案を提出した。
だが、これも貴族達の画策により市民集会で否決。
市民の中にも貴族の部下や借金を負うた者が多く、市民集会まで も貴族の手に落ちていたのである。
なので、本来ならば元老院・執政官(政務官)・市民集会で三分され ていたはずが、市民集会の力は弱く、実質的に二分されていたよう なものだった。
絶望した市民達は、カノンの都市より少し離れた聖なる丘、第8の丘 へと位置どり、決して出てこようとしなかった。
もちろん、この隙を外敵である周辺諸部族が見逃すわけも無く、彼 らは攻めてくる。
そんな中、後のゴリオラヌスの友人であるメネラースが民衆を胃袋 と足のたとえ話で説得し、市民達は護民官を元老院に入れるという 条件付きで、兵士の召集に応じたのだった」
17年 「執政官にして将軍コミユニスは、山地族ヴォルギス族の首都ゴリ オリを包囲する。これを一人の青年が攻略し、制圧し、彼はゴリオラ ヌスと称せられる。
こうして、第一次カノン周辺諸部族戦争は終結し、新たな周辺諸部 族との同盟が結ばれたのであった。
だが、ヴォルギス族は山地族であり、首都ゴリオリも新たに平地に 作られた都市に過ぎない。彼らは、より山地に近い領土で、虎視 眈々(こしたんたん)と反撃の機会を狙っていた」
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