第3話 チュートリアルその3
熱い、糞熱い...... って、また死んだ? あれ? あれ? 確かボスカエルを倒した筈なのに......
行き成りだが、俺は何度も横たわった砂浜に再び横たわっていた。
どうやら、セーブポイントに戻ったようだ。
でも、死んで無かった筈なんだが......
確か、巨大カエルを倒して...... ドロップされた宝箱を拾った所までは思い出せた。
疑問を感じた俺は、直ぐにステータスを確認する。
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LV:1
HP:20/20
MP:20/20
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STR:142/0/2
VIT:118/0/1
AGI:139/0/1
DEX:146/0/2
INT:10/0/1
LUK:10/0/0
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EX:7/1000
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PT:10
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間違いなくレベルが上がっていた。
でも、その内容はツッコミどころ満載だった。
「なんだよ、このレベル補正。在り得ないだろ」
そう、とても悲しい程に低いレベル補正だった。
更に、獲得ポイント十ってなんだよ......
オマケに、必要経験値が一ケタ増えて一千になってるんだけど......
これ、死ぬまでチュートリアルを遣り続けるんじゃね~~?
暫く呆然とステータスを確認していたのだが、ここで何年見続けても変わるものでわないと己に言い聞かせ、獲得ポイントの割り振りを考える。
「現状を考えると、VITだよな。なんてったってHP二十だからな」
そうなのだ。今のステータスバランスから行くと、ヒットポイントが異常に低いのだ。
攻撃力や回避力はある程度上がったのだが、このままだと一撃死なんてことすら在り得る。
だが、だが、だが、だが、ここは在り得ない世界だ。
普通にやっても絶対に上手くいかないだろう。
それなら、俺に必要な物はなんだ?
いや、そんなことは既に解っているのだ。
「俺には運が必要だ!」
すぐさまガイダンスでLUKの効果を調べる。
内容は次の通りだった。
・一定確立で強攻撃が発生
・一定確立で完全回避が発動
・レアドロップ率向上
・進行上での運気アップ
ほらほらほら! やっぱりLUK命だろ!
ということで、迷うことなくLUKを上げる。
そして、ステータスを確認。
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LV:1
HP:20/20
MP:20/20
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STR:142/0/2
VIT:118/0/1
AGI:139/0/1
DEX:146/0/2
INT:10/0/1
LUK:10/10/0
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EX:7/1000
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PT:0
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来たぜ~~~! LUKが倍になった!
よしよし、後は...... おっ、スキルポイントなるものがある。
スキルポイントは現在一だな。
「一で何が取得できるんだ?」
早速、ガイダンスで調べると、取得可能スキル欄に『武力』、『魔法』、『防御』、『補助』とあった。
ここで悩むのが、スキルの見通しが効かないことだ。
普通なら、未取得でも将来性が見える筈なのだが、この糞ゲーは先の事を全く表示してくれない。
「糞ゴミだな。って、今更か......よし、今回は保留にして二ポイントになった時に判断しよう」
じゃ~、次はアイテムの時間だよな。
俺は早速とばかりに、巨大カエルから出た宝箱を取り出す。
「さ~て、何かな~~!何かな~~~!お~~~~~~ぷん!」
ウキウキしながら宝箱を開けると、そこには靴が入っていた。
取り出してみると、靴の知識など全くない俺でも解るくらいに、丈夫そうで良さ気な革靴だった。
即座にアイテム鑑定機能で確認すると、『俊敏の革靴』という名前だった。
名前の通り、俊敏性が向上する能力まで付随していた。
「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
とうとう俺にも運が向いてきたぜ。
すぐさまその革靴を履き、ステータスを確認する。
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LV:1
HP:20/20
MP:20/20
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STR:142/0/2
VIT:118/0/1
AGI:139/0/11
DEX:146/0/2
INT:10/0/1
LUK:10/10/0
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EX:7/1000
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PT:0
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おおおお、レベル補正の場所が一から十一に上がった。
多分、靴で十の補正が付いたのだろう。
よっしゃ~~! 来たぜ~~~! なんて喜んでみたのだが、俺の恰好って如何なんだろう。
素っ裸に靴だけとか、オマケにフルチンだし...... どう考えても変質者だよな?
「いや、誰も見ている者など居ないのだ。気にしてどうなる」
己にそう言い聞かせて、次なる行動に移る。
さて、レベルアップでセーブポイントに戻った訳だが、きっと、これには何かの理由が在るのだろう。
だから、取り合えず砂浜を探索する。
そして、LUKを上げた自分を褒める事となる。
そう、金属バットの入った宝箱を見付けた処に、またまた宝箱があったからだ。
「俺って、最高にツイてるぜ。まあ、男だし、付いてる付いてる」
スーパー上機嫌で宝箱を開けると、そこにはグローブがあった。
取り上げて確認したのだが、革製の指ぬきグローブだった。
「超絶カッコイイ~~~~!」
すぐさまアイテム鑑定機能で鑑定する。
すると、『屈強のグローブ』という名前で、攻撃力と命中率が向上すると表示された。
それを読んだ俺は、透かさずグローブを装着する。
即座にステータスオープン。
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LV:1
HP:20/20
MP:20/20
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STR:142/0/7
VIT:118/0/1
AGI:139/0/11
DEX:146/0/7
INT:10/0/1
LUK:10/10/0
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EX:7/1000
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PT:0
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おおお、STRとDEXの補正が五増えた。
「今日は最高な日だ!」
そう、俺は最高に調子に乗っていたのだ。
きっと、これが拙かったのだろう。
だが、それに気付くのは、もっと後の話だった。
ステータスを更新した俺は、意気揚々とカエルを倒しにジャングルへと入った。
「カエルちゃ~ん、いらっしゃ~~い!」
既にカエル如きに遅れを取ることも無いので、鼻歌混じりにカエルを探す。
だが、そこに現れたのはカエルではなかった。
「ぶひっ~~~~~!」
そう、豚だった...... いや、オークか......
そこには丸々と太った二足歩行するオークの姿があったのだ。
身長は俺と同じくらいだから、百七十センチないくらいだろう。
だが、気に入らね~~~! 何がと問われると、オークが貫頭衣を着ていることだ。
俺がフルチンなのに、何でオークが服を着てるんだ? 舐めてんのか、コラ!
驚きよりも怒りの感情が勝り、オークを睨み付けたのだが、眼前のオークは右手に持っていた斧を落として腹を抱えた。
「ぶひゃひゃひゃひゃ!ぶひゃ~~~~~~~!」
奴は俺のフルチン姿に腹を抱えて大爆笑を始めたのだ。
くそっ! くそっ! くそっ! くそ~~~~っ! ぜって~~許さね~~~!
「死ねや豚野郎~~~~~~~~!」
怒りマックスの俺は、奴の頭を右手に持つ金属バットで殴り付ける。
だが、奴は倒れる事無く、ヒットポイントの四分の一が減っただけだった。
「くそっ!豚の癖しやがって!かて~~~!」
俺の動揺を余所に、今まで大爆笑していた豚は、殴られた頭をブンブンと振り正気を取り戻す。
「ここは速攻だな!死ねや豚~~~~!」
怒りの声を放ちながら金属バットを再び奴に打ち込むが、今度は斧で防がれてしまう。
更に、奴は何を考えたのか、行き成り叫び声をあげた。
「ぶひ~~~~~~~~~ィ!」
すると、枯れ葉や草を踏む音が近付いてくる。
そして、あっという間にオークの集団に囲まれてしまったのだ。
「な、なんだと、いつの間に、くそっ!」
その時だ。オークの集団に動揺していた俺の腹に激痛が走る。
だが、痛む腹を見る事も出来ずに、俺の身体は後ろに倒れるのだ。
そこで目にしたものは、上半身の無くなった俺の下半身と、吹き出す血の雨だった。
「ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
気が付くと絶叫していた。
倒れずに残っている己の尻を見ながら、ただただ無意識に絶叫するだけだった。
そう、俺は後ろから来たオークに身体を真っ二つにされたのだ。
それを理解した頃には、既に俺の意識が薄れていく所だったのだが、鮮明に聞こえるものがあった。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ~~~!」
「ぶひひひひひひ~~~~!」
「ぶひっぶひっ、ぶひ~~~~!」
そう、オーク達の蔑むような笑い声が耳に焼き付くのだった。
確か、俺の心が病み始めたのはこの頃からだったと思う......
砂の熱さを背中で感じる。
「あ~~~~~~~~~~~~~~っ!」
意識が覚醒すると、俺の脳裏に身体を真っ二つにされたイメージがフラッシュバックし、無意識に絶叫してしまった。
砂浜に座ったまま、壊れそうな程に動く心臓を手で押さえる。
既に治っている筈の腹部が痛む気がして、慌てて両手で弄る。
そして、身体に問題ない事を確認し終わると、再び砂浜に上半身を倒す。
目を瞑ると、鮮明にあの光景が脳裏に浮かぶ。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそ~~~~~~~~~~!」
砂の上をのた打ち回り、意味も無く身体を暴れさせる。
「ちくしょ~~~!ちくしょ~~~~!これなら、退屈な毎日の方がマシじゃね~か~~~~!」
罵声を放ちながら、身体を起し砂を何度も殴り付ける。
「なんでだ、なんで俺なんだ?なんで、こんな事になったんだ?くそっ!くそっ!」
立ち上がり砂を蹴り上げる。何度も、何度も、何度も、永遠と思えるくらいに何度も砂を蹴る。
いつの間にか俺の頬は滂沱の涙で濡れ、視界は歪み、何もかもが如何でも良くなってくる。
「あ~~分かったぜ。死ねばいいんだな。消滅すりゃいいんだろ!」
そう口走りながら、海へと向かう。
徐々に歩く速度を速め、海へと飛び込む。
泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ、何も考えずに、ただひたすら泳ぎ続ける。
すると、何かにぶつかった。
疑問に思い、泳ぐのを止め、ぶつかった何かを確かめる。
だが、そこには何も無かった。砂浜で見た水平線が見えるだけだった。
「クククッ、ふんっ、どうせゲームだ。所詮ゲームだ。ああ解ったぜ。やりゃ~いいんだろ?やってやるさ。そしていつか、このゲームを作った奴をぶっ殺してやる」
壊れ始めた俺は、心に誓った。
「絶対に負けね~~~!絶対にぶっ殺して遣る!待ってろよ!必ず殺してやるからな~~~~~!」
そう、俺をこんな所に送った奴、こんなゲームを作った奴、何処かで俺の状況を見て笑っている奴等を全員始末すると心に誓ったのだ。
そして、俺は生まれ変わると誓ったのだ。
決意を新たに砂浜へと戻り、これからの行動について考えた。
今回の事で分かったのは、レベルが上がると出現するモンスターが変わる。オマケに格段に強くなるという事だ。
それなら、俺も強くなればいい。鍛錬すれば基礎値が上がるんだから、ただひたすらに鍛錬すればいい。
そう考えて、直ぐに取り掛かる事にしたのだった。
砂浜に俺の汗が下たる。
乾ききった砂からジュっという音が出そうだ。
「千二百三十一、千二百三十ニ、千二百三十三......」
あれから二カ月の時が過ぎた。
俺は考え得るトレーニングをひたすら熟し、死ぬ寸前まで身体を鍛えた。
ああ、死ぬ寸前とは比喩では無い。
余りの過酷なトレーニングの所為でヒットポイントが減るのだ。
「拙い。残り二ポイントだ」
視界に映るHPゲージを見ながら、片手腕立て伏せを中断する。
「くそっ、くそっ、糞ゲーが~~~~!鍛錬でHP減るとかどんだけ糞なんだ!」
罵声を吐きながらステータスを確認する。
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LV:1
HP:20/20
MP:20/20
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STR:228/0/7
VIT:193/0/1
AGI:241/0/11
DEX:254/0/7
INT:10/0/1
LUK:10/10/0
------
EX:-93/1000
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PT:0
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かなり過酷なトレーニングのお蔭で、随分と基礎値が上がった。
だが、レベル2のデスペナが百だったのには魂消た。いや、呆れた。
流石は糞ゲー様だ。まあ、糞を糞と言っても始まらね~!
明日からは、あの豚共を始末してやる。
丁度、食い物も調達する時期だしな。
砂浜に横になって、そんな事を考えていると、HPも満タンになった。
どうやら、横になったり、座ったりすると回復が早いようだ。
まあ、まだ二十だしな。てか、この調子でいくとレベル10到達時のHPが百十とかも有り得るな。
「ふんっ、糞ゲ~が、いつか見てろよ」
毒を吐きながら、俺は再びトレーニングに励むのだった。
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