第3話
「し〜ゆ〜う〜♪ おッはよぉ〜!」
「うわっと……
「やってシユウは抱きやすいンやもん〜♪」
「……最悪な事聴いた…………」
「エエッ!? な、な、なんでや!?」
「柊五月蝿い……」
「シユウ酷いで!?(汗)」
隣でギャーギャー騒ぐ最早腐れ縁の友人、
ソレを見て騒いでいた蒼汰が更に騒ぎ出す。
「アーーーーーーッ!? 今日テストやん! アカン忘れとったァァァァァァァァァッ!!」
「…………柊ガチめに五月蝿い。近所迷惑考えろ、馬鹿」
「痛ッ! うぅぅ……うぃッス……」
騒ぐ柊木の脛に軽く蹴りをかまして、優弥はノートをパラパラ捲る。
「うぅぅ……シユウは真面目やなぁ……流石学年トップ」
「柊は真面目にやりゃ僕くらいの所まで、普通に来れるだろ? 真面目にやってない、お前が悪い」
「え〜? あんなん、合格点が取れればエエんよ。単なる『学業に専念してはりますか〜?』って、学校側の確認の為なんやさかいな」
「…………柊ソレ、禁止事項だけど……他人には聴かせられないヤツじゃ無かったっけ?」
「ありら? そうやったっけ?」
そうすっとぼけた柊木に溜息を吐きつつも、ノートをペラペラ捲る。
「…………ア、そうだ。柊、少し訊きたい事があるんだけど」
「ン? 訊きたい事? 俺で良かったら聴くで?」
「ありがと。『龍忌堂』って名前の店、知らないか?」
「『龍忌堂』? ン〜……知らへん。少なくとも俺の情報網には引っ掛かってへん」
「そうか……」
ー…………柊でも知らないのか……深谷さんが言った話は本当なのかもしれないな……
「……ン? 『龍忌堂』? 若しかせェへんでも破間町に伝わる、あのお店の事かいな?」
「あぁ……深谷さんから聴いたんだが、本人も良く解って無いらしくてな……」
「ふぅん……一応調べてはみるけど、期待はせェへんどってな?」
ニッと何時もの悪戯っぽい笑みを浮かべて、柊木はそう自信無さげに言った。
「有難う。お礼に今度本屋に行くの、ついてってやるよ」
「おぉーソレはあざーす♪ 丁度二ヶ月後にアヴェマリアちゃんの本が出るんや! しかもな、本屋でサイン会やるんやて! ソレに一緒に来てや!」
「OK。柊は本当に好きだなァ……」
「あの人は神やからな!✨」
柊木が嬉しそうに熱弁を奮い、おかしな事を言い始めた。まァ関係の無い話だけれど……。
キーンコーンカーンコーン
「おっと始業の合図が鳴らはった! じゃまた後でな〜」
「ン……また後で」
柊木が慌てて席に付いたとほぼ同時に、ガラッと教室の戸が開いて担任の、
「うぃ〜ッス、全員来てるか、寝惚け野郎は流石に居ねェよなァ〜?」
「麟ちゃん、生徒相手にその言い草は酷いで〜?(笑)」
「おぉ何だ柊木。今日は起きてこれたんだな。後麟ちゃん言うな」
「俺は先生みたいな寝坊助ちゃいます〜(笑)えー? 何でや? 可愛ええやん、麟ちゃん♪」
「止めぃ(笑)後俺も寝坊助じゃねぇよ?」
麟乎のボケた挨拶に柊木が笑いながら、ツッコミを入れる。
此処まではいつも通りなのだけど。
先生は笑顔でプリントの束を取り出し、にこやかにサラッと言った。
「まァ茶番はこの辺にしといてだな。今日は小テストやるって前々から言ってたから、まァさかテス勉サボった奴ァ居ねェよなぁ?」
流石に柊木もテス勉サボったとは言わないだろうと、高を括っていたら柊木がまたもや悪戯っぽい笑みを浮かべて手を挙げた。
「あ〜ハイハイ! 俺テス勉やってへんわ! 忘れとってん! 赦したってや麟ちゃんセンセ♪」
…………そうだった。
麟乎は呆れて柊木を見たと思ったら、次の瞬間高速でチョークを柊木の額に計十発、全て同じ位置に命中させる。
「痛ったァァァァァァァ!? 体罰反対やで麟ちゃん!?」
「お前は少しは真面目にせんかァァァァァァッ! 帰りに千回単語書き取りな! ア、因みに『せんか』と『千回』は掛けてねぇよ?」
「麟ちゃんソレ寒いわ……後誰も訊いてへんやろ……」
「うっさいわい。寝言は寝て言え」
「麟ちゃんがソレを言うんやな……寝坊助のクセに……」
「ア"ァ"? なんか言うたか柊木ィ!」
「いーえなぁんにも〜(笑)」
顔が笑ってんだよ! ッとまた柊木が
…………しっかし
と考えていると、死の淵から生還したらしい柊木が額を
「あ〜痛いわァ……麟ちゃんは容赦があらへんなぁ……」
「『会いたい』って誰に? ……容赦が無いンじゃなくてして無いんじゃないの? そもそも柊が先生に対して『寝坊助』とか言うからだろ」
「そりゃ勿論アヴェマリアちゃんに♡ って何ハズい事言わせてんねん!? やってあの先生弄るとおもろいんやんもん〜(笑)」
「柊が勝手に言ったんだろ……面白いからって弄るな、仮にも先生を」
「あっはは〜其処は
「オラァテスト始めんぞ、席に付けやァ〜」
噂の本人が来て、授業三分前だと教えてくれる。柊はクスクス笑いながら軽く片手を上げて、席に戻った。
「じゃあ号令」
「起立!」
そうして今日も一日が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます