8夜め ヘルシング万能説
ヴァン・ヘルシングと言えば吸血鬼ハンター。
吸血鬼ハンターと言えばヴァン・ヘルシング。
もはや不動の事実と言って差し支えないのかもしれませんが、ちょっと待ってください。
原作のヴァン・ヘルシングさんは、当時なら(多分)おじいちゃんです。
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そもそも原作ドラキュラのヴァン・ヘルシングとは何者か?
フルネームはアブラハム・ヴァン・ヘルシング。オランダはアムステルダムにある大学で医学教授をしています。メインキャラの一人、精神科医ジャック・セワードの恩師でもあります。原作ではルーシーの病状をみて吸血鬼の仕業と判断し、適切な対応を取った頼れる先生ですが、やっぱり、その、何と言いますか。
ご老体です。
よって映画ではおなじみの、教授が丁々発止と伯爵とやり合って……というシーンはありませんし、やりようもございません。伯爵を倒すのは若者でございます。伯爵の配下相手にミナを守って活躍することはありましたが、そこはそれ、やはり知略、籠城に尽き、物理的な戦闘場面でこちらから積極的に攻めるシーンはほとんどありません。
それにもかかわらず、なぜヘルシング教授はここまでの知名度を誇っているのでしょうか。
まずはそのインパクト。突然(でもないけれど)外国からやってきて、ジャックですら思いつかなかった突飛な判断でもってルーシーを診察、にんにくの花を使った防御で成果をあげます。
おそらくこの時点で教授は「吸血鬼の実在」を念頭に置いて動いており、それが後世の「吸血鬼に詳しいヘルシング教授」につながるのではないでしょうか。
いえ、作中でも十分詳しいのですけれども。
そして映画での扱い。
映画になると主人公のジョナサンくんを差し置いて、伯爵とタイマン張ったりすることの多い教授です。タイマンまで行かなくとも、外堀を埋めて伯爵の退路を断つくらいなら思いのまま。
映画ではビジュアルの都合なのか、おじいちゃんまではいかず「おじさま」然としたヘルシング教授が多数派です。そのくらいの年齢ならば、伯爵とタイマンしても違和感は少ないですよね。それに映画の場合、「おじいちゃん」よりも「かっこいいおじさま」のほうが観客が来ると思うので……そういう思惑もあるのかしらん?
そして今や「ヴァン・ヘルシング」の名前が独り歩きをしている始末です。
ひょっとして、本当にひょっとすると、彼が「教授」であることすら知らない方が「ヴァン・ヘルシング」を「吸血鬼ハンター」として動かしているのではないかと不安になるくらいの有様です。
イマドキの、活きのいい「ヴァン・ヘルシング」たちを応援したい気持ちはもちろんありますが、そんな彼ら、彼女らを創る人たちには、本物の「ヴァン・ヘルシング教授」を知っていてほしいなぁと思うのは作者のわがままでしょうか。
今晩はこれにて。
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