5夜め 赤い羊膜のアイツ

 吸血鬼マニア、冥利に尽きる!

 という作品に出会えたことがあります。

 文学系ではなく、民俗学系の方面で。

 しかもどんな作品だったかというと、エロゲでした(笑)。

 今回はそのゲームを語る回となります。

 

 「沙耶の唄」で有名な、ニトロプラスの「吸血殲鬼ヴェドゴニア」。かなり昔のゲームです。発売当時作者は未成年のうえ、エロゲのエの字も知らないレベルだったのですが、角川スニーカー文庫から小説版(こちらは全年齢向け)も発売されていました。それを無邪気に「吸血鬼だ!」と買って帰ったわけです。

 この作品のキャラクター名、ほとんどが吸血鬼関連の伝承やアイテムからとられているのです。以下、それをまとめてみたいと思います。

 一部作者の勝手な考察もありますので、間違いなくこれだ! とは言い切れませんがご了承ください。


 ***


 まずは主人公の学友から。


【来栖香織】


 来栖→クロス→十字架ではないかと推測。

 香織は各地で香草が魔除け(吸血鬼除けにも)使われていることに由来? かなり強引なこじつけですが。


【白柳弥沙子】


 白柳の「柳」は魔除けに用いる木。「白」はちょっとわからないけれど対吸血鬼の必須アイテム「白木の杭」にひっかけてあるのかもしれません。一部の伝承では杭に使う木の種類まで指定がありますが、柳があったかどうかはちょっとわかりません。勉強不足。

 名前の読みは「ミサコ」なので教会でやるミサ?


【網野鏡子】


 「網」は「吸血鬼は細かいものを数えずにはいられない」という伝承で、網の目を数えさせて吸血鬼の動きを封じることからではないかと思います。

 「鏡」はそのまんま、「吸血鬼は鏡に映らない」伝承かと。


 ただし、主人公「伊藤惣太」は謎。どなたか元ネタをご存知の方がいたらコッソリ教えてください。


 ***


 続いて吸血鬼ハンター二人組。


【モーラ】


 スラヴ地方に伝わる伝承の怪物。眠っている人間にのしかかって窒息させる。「血を吸う」記述はあるがいわゆる吸血鬼吸血鬼した雰囲気ではありません。

 少女の姿で現れる伝承もあるそうなので、ヒロインの名前としてはぴったりだったのかも。


【フリッツ】


 「吸血鬼」の異名を持つ、連続殺人鬼フリッツ・ハールマンが由来でしょう。


 ***


 敵対吸血鬼一味。


【リァノーン】


 リァノーン・シーという、吸血鬼というよりは妖精? のような伝承があります。ファンタジー作品に造詣の深い方なら「リャナンシー」と言えばご存知かも。

 美しい女性の姿をしており、人間の男性に才能を与えますが、同時に寿命を縮めます。命が惜しくば別の男性に彼女を押し付ければ回避できるとか。


【ギーラッハ】


 この名前は探せども探せども引っかからず、長期にわたり疑問でしたが、種村季弘先生の「吸血鬼幻想」にてやっと発見。「復讐鬼」に「ギーラッハ」というルビがふってありましたが、それ以上の記載はなく、どういう吸血鬼なのかはいまだに不明です。詳細ご存知の方がいらっしゃいましたら、コッソリ教えてください。


【ナハツェーラー】


 ドイツ伝承の吸血鬼。教会の鐘を鳴らして、その鐘の音を聞いたものを全員皆殺しにできるというとんでもない能力を持っています。

 が、スケールの大きい元ネタの割に、ゲームではあんまり活躍しませんでした。残念。


【ウピエル】


 ロシア方面の吸血鬼。この方面はむかーし、図書館の吸血鬼図鑑で勉強したきりなので手元に資料がなく曖昧です(すみません)。確かウピエルは「舌にトゲがあり、それを犠牲者の胸にさして血を吸う」というエイリアンみたいな特徴があった……と思います。

 ゲームでは普通に牙たてて血を吸ってました。よかった。


【ストリクス】


 公式サイトのキャラクター紹介にはいるのに、本編ではいっぺんもこの名前で呼ばれなかったんですよね……。

 まあそれはさておき、ルーマニアの「ストリゴイ」が原型ではないかと思われます。確証はないです(こら)。


【諸井霧江】


 諸井→モロイ。「生けるヴァンパイア」と言われ、死ぬと「死せるヴァンパイア」ことストリゴイになります。彼女は人間なので、そのために生きているほうから名前を引っ張ってきたんじゃないかと思います。「霧」はおそらく、霧に変化する吸血鬼の伝承から。


 ***


 以上です。

 ふー、書いた書いた。

 途中「これ合ってたっけ?」と何度かググりました。やっぱり資料は買っておかないとダメですね。

 この通り、吸血鬼マニアにはとっても楽しい「吸血殲鬼ヴェドゴニア」ですが、そうじゃなくてもバイオレンスアクションとして十二分に楽しめる作品なのでおすすめしておきます。成人向けゲームなので、そういうのに抵抗ある方や未成年の方は小説版をドウゾ。


 いつも以上に作者が愉しいだけのダダ漏らしですみません!

 では、今晩はこれにて。

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