王都 親友となる者

「わぁ~、父上!あそこが王都ですか!」


ゴーレム馬車の中で少年が興奮して自身の父親に確認する。

父親はニコニコしながら息子に向かって一度縦に首を振る。


「ああそうだ、あそこがデーゼスト王国の王都デーゼだ」


母親もニコニコしながら息子を見る。


「フロートもう少し落ち着きなさい。怪我でもしたらどうするのですか」

「すみません母上!でも、ずっと楽しみだったんです」


少年は馬車の窓からもうすぐ着く王都を見ながらそう言う。

少年、フロート・グーチェンの人生で深く関わる者たちとの出会いは刻々と迫っていた・・・




デーゼスト王国グーチェン子爵家

騎士や魔法士を度々輩出している下級貴族にしては名が通っている家だ。

今の当主であるフーガスも元々は近衛兵として働いていたが、家督を継ぐために領地へと戻った。

そこで隣の領地で幼馴染のアイリス・ベーゼ伯爵令嬢と結婚をし子、フロートを授かった。フロートはフーガスとアイリスから美しい紫がかった黒髪とルビーの様な赤い瞳を持った美少年。

何でも感心を持ち、何でもやってみたいと思う普通8歳の少年だ。

それに多少高い知能と魔力を持っただけの···



王都に来たのはフーガスの仕事で用があったからだ。

それにフロートが行ってみたいと言い、何なら家族全員で行こうとなり行くこととなったのだ。


「ここが王都か~!賑やかですね、父上!それに人がたくさんいる」


馬車の中で王都の町並みを見ながらフロートは、フーガスに言う。


「そうだろう、きっとフロートも楽しめるだろう」


そんな雑談をしていれば、馬車は王都にいる間泊めさせてもらうフーガスの知り合いの屋敷についた。

屋敷の主はワームス伯爵と言い、フーガスが近衛だった頃の同期で親友らしい。

ワームス伯爵は夫人との間に1人の息子がおり、ヅィスクと言うらしい。


「フーガス!よく来たな」

「ジェイク、久しぶりだな!1か月ほど世話になるよ」


久しぶりに会ったフーガスとワームス伯爵は握手をし、固く包容しあった。包容し会うとフーガスの後ろにいたアイリスに気づき挨拶してきた。


「ああ、グーチェン夫人お久しぶりです!妻もお会いしたいと言っていました」

「ワームス伯爵お久しぶりです。私もジーナにお会いしたく思っていましたので、嬉しく思いますわ」

「ええ、妻も喜びます。ところでフーガス、この子のことを早く紹介してくれないかな」


そう言ってワームス伯爵はフロートをチラリと見ながら、フーガスに紹介を頼んだ。


「ああ、手紙にも書いたが俺の息子のフロートだ。フロート挨拶しなさい」

「はい、父上。お初目お目にかかります、ワームス伯爵閣下。グーチェン子爵当主フーガスが子、フロートともうします。滞在中お世話になります」


伯爵は目を見開き驚きをあげた。


「これは驚いた、フーガス。まだ幼い子供なのにこんなに立派な挨拶ができるとわ、さすがお前の息子だな」

「そうだろう、私の自慢の息子だからな!」

「いやはや、俺の息子にも見習わせたいぐらいだ」


フロートはフーガス達が話している間、ずっと屋敷の中が気になって仕方がなかったが邪魔になってはいけないとじっとアイリスの隣に立っていた。

しかしやはりまだ子供のフロートは体をウズウズさせていたため、周りの大人はすぐに気がつき、その光景に笑みを見せた。


「立ち話もこのへんにして、そろそろ中に案内しよう。妻と息子も待っているからな」


そう言って、フロート達は伯爵に屋敷の中に通された。

通されたはじめの部屋は応接室。

中に伯爵の妻と息子がいるらしい。

コンコン


「ジークリーナ、ヅィスト、フーガス達をつれてきたぞ」

「まあ、早くお通しして!」

「父上早く!」


扉が開くと中にいる人物達が分かった。

赤茶の髪をまとめた美女、ジークリーナ伯爵夫人と伯爵面影を残した顔と夫人と同じ髪を持つ活発そうな少年、ヅィストだ。


「お久しぶりです、ジークリーナ殿」

「お久しぶりですわ、ジーナ様」

「久しぶりね!フーガス様、アイリス様!」

「おかわりないようで良かったですわ」


夫人とフーガス達は再会を喜びあい、自身達の子供の紹介となった。


「息子のフロートです」

「フロートです、お世話になります」

「よろしくねフロート、こっちは息子のヅィストよ」

「ヅィストだ、よろしくなフロート!」

「こちらこそよろしく、ヅィスト様?」

「ヅィストでいいよ」

「分かった、よろしくヅィスト」


フロートは顔に笑みを浮かべ握手を求めた。


「ああ!」


ヅィストはそれに答え硬く握手をした。

これが後のフロートの親友であり、よき相談相手であり、ライバルであるヅィストとの出会いである。

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