『ダタッツ剣風』シリーズの三作目にして、本編の前日譚となる物語です。
とある港町を訪れたダタッツは町を襲う海賊と戦い、しかし海賊達に秘められた過去や、町全体を覆う不穏な空気を感じ取り……と、全体を通して時代劇や西部劇を思わせる短編エピソードでした。
シリーズを通して読んでいると、元々高かった文章力に更に磨きがかかり、特に戦闘シーンにおいては他者の追随を許さぬほど緊迫感やスピード感に溢れていると感じました。それでいて難しい言葉や長い文章を使わずに、簡潔でありながら濃密なバトルを描けるのは、素晴らしいの一言です。
ただシリーズを通読したが故に、女性が辱められそうになってそれを助ける……という場面がちょっと多いかなとも感じました。女子キャラの肉体的魅力やそれを狙う下劣な男達の理不尽さ、それを救う主人公のカッコ良さを演出できる手法ではありますが、あまり多用すると陳腐さや下品さに繋がってしまうリスクもあります。
ピンチからの脱出を描く方法は他にも色々とあるので、表現の幅を広げるという意味では一考の価値があると思います。
とはいえ主題となるテーマは相変わらず重厚であり骨太で、ダタッツの抱える過去が現在の戦いに繋がり、しかしそういった因縁や運命を抱えたままでも突き進んでいく姿は、やはり魅力的でありヒロイックでした。
起承転結も綺麗にまとまっており、本編を読んだ人にはオススメの外伝的作品となっています。