2-13
「ちがっ! 違うのだフォルネウス」
「いやーっ! 何なのこの生き物! きもちわるいいいいいいい!」
おい、割と傷付くぞ! それ!
「ええい! 俺の話を聞かぬかあああああああああああああああああっ!」
部屋がビリビリと音を立てて揺れた。
その衝撃に、さすがのフォルネウスも静かになった。
「違うのだ。これは人間の奴隷をいたぶるための格好なのだ」
フォルネウスは目をしばたたかせ、首を傾げた。
「え……ヘル様? それって、どういうことなんですかぁ? って、フォルネウスは心の内を明かして欲しいなって思っちゃうもん」
俺は偉そうに腕を組み、体を反らせて無理にフォルネウスを見下す体勢を取った。兜の隙間から、瞳の赤い光が輝く。
だが全裸だ。
「本来の俺の姿では、人間如きの貧弱な肉体などすぐに壊してしまう。だが、此奴らと同じ肉体に変身することで、より屈辱を与えながら、長い時間をかけて苦しめることが出来るのだ」
フォルネウスは納得いったように、ぽんっと手を打った。
「なぁるほど! さすがヘル様。あたしでは思いも付かないことを平気でやってのける。そこにシビれる、あこがれるぅ、ってフォルネウスは感心しちゃうもん」
おい、誰だこのセリフデータ作った奴は。今すぐ人間やめろ。
「でもおっ、ヘル様ぁ? あたしをほったらかしにして、奴隷を呼んで愉しまれるって、ひどくないですかぁ? せめて、あたしも一緒に遊ばせて、ってフォルネウスは拗ねてるんだもん」
「え、いや、ごほん、ごほんっ! 貴様との逢瀬は、いずれまた時を見て――」
人の話を聞かず、フォルネウスはベッドがよく見える位置の、三人掛けのソファに寝そべった。
「ふーんだ。ここで見てるんだもん。奴隷がヘル様に粗相をしないか、見張らなきゃだし。それと、あたしに御用があったら、いつでも呼んで下さいねって、フォルネウスはさり気なく自分も可愛がって欲しいとアピールするんだもん♥」
こいつはごまかせない。どうする? と俺は哀川さんにアイコンタクトを試みる。哀川さんはギロリと俺に殺意の籠もった視線を送って寄こす。
これはあれだな。えっちなことをしても、しなくても殺されるパターンだな。だったら、少しでもメリットの多い方を選ぶのが必定。
俺は哀川さんのあごをつかむと、無理矢理俺の方を向かせた。
「この奴隷めが! 俺に媚びへつらうが良い。さすれば、卑しき身の貴様にも、情けをくれてやろうぞ」
哀川さんは口を強く引き結ぶ。のろのろと膝を折って座り床に手を突くと、深々と頭を下げた。そして額を床にすりつけて懇願する。
「……この、卑しい奴隷に、もったいなくも魔王様のお情けを……下さい、ませ」
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