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それによると、そもそもエグゾディア・エクソダスで使っている次世代VRシステムは、教育システムの開発元である『NNTシステムズ』が開発したものだそうだ。
エグゾディア・エクソダスの開発会社『ヘルズドメイン』も、NNTシステムズも親会社は一緒で、開発に金のかかる次世代VRインターフェイスを共有し、コストを削減。別の事業セグメントで商品を展開することにより、莫大な開発費を回収しようという計画なのだそうだ。
サーバーやネットワークも共用していたそうだが、それが裏目に出た。まずいことに、同じネットワーク内にあるエグゾディア・エクソダスのデータに意識データが混入。ゲームの中のプレイヤーキャラとしてログインしている状態になってしまった。
たまたま会社からログインしていた
「思ったより落ち着いているのね。てっきり、みっともなく泣き叫んで、転げ回るかと思ったわ」
「正直、最初はそんな気分でしたけどね……でも落ち着いて考えてみれば、今の俺にやれることは何もないし。外の世界にいる頭のいい人たちが、何とかしてくれるのを待つことしか出来ないじゃないですか。まあ、システムダウンしないかっていう怖さはあるけど、きっと優秀なエンジニアがよってたかって面倒見ていると思うし。むしろ、最先端のゲームをひたすら遊んで暮らしていればいい、と考えた方が気が楽じゃないですか? 心配するとすれば、ネトゲ廃人になって、現実世界に戻った後で社会復帰が出来なくなるかもってくらいで……」
哀川さんは怒りに顔を歪めた。
「そんな簡単な話じゃないの! 何でそうバカなの!?」
「ひぇっ!? す、すいません!」
再び居住まいを正し、俺は大きな体を何とか小さくしようと縮こまった。
「でも、堂巡くんがヘルシャフトなのは救いかも知れないわ」
どういう意味だ? ああ、魔王の力で自分を奴隷から救い出せってことかな?
「なぜなら、いま何より優先すべきは、あなたのクラスメートたちがゲームをクリアするのを阻止することだからよ」
なるほど、分からん。
「普通、こういった場合って、ゲームをクリアしたら元の世界に帰れるんじゃ?」
『あたしたちは絶対に元の世界に帰るんだから! 絶対に!』
『みんな頑張れ! もう少しでこいつを殺せる! 殺して、俺たちは元の世界へ帰るんだ!』
「普通ってなによ……こんな事態、普通は起きないでしょ?」
いやまあ、そうなんですけど。この手のフィクションの場合って、普通そうじゃないですか。で、俺みたいな他人より有利にゲームを進めることが出来る主人公が、無双してヒロインのハートをがっちりキャッチとか。
「まあ、元の世界に戻る、というのは正解よ。ゲームの開始時にチュートリアルでもそう言ってるし。だから君のクラスメートたちも、そう思い込んでいるのでしょうね」
「違うんですか?」
「違わないわ。でも、それは通常の場合。今は緊急事態よ」
哀川さんは口元に指を添えると、深刻な表情を浮かべた。
「メインクエストをクリアして、このゲームがエンディングを迎えたとき……つまり
胸の内に冷たいものが湧き上がった。俺が返す言葉に詰まっているのを見て取ると、哀川さんは深刻な表情で話を続けた。
「肉体の受け入れ準備が出来ていないときにデータのみが排出される。行き場のない意識データは消滅する。普通ならゲーム内の出来事が失われるだけで、外の体は普通に目を覚ますだけ。だけど……」
「今は意識データはゲームの中にしかない……じゃあ、そうなったら、俺たちは……」
「……死ぬわ」
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