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「うーん……とすると、何かエラーでも起きていたのかしらね。それでログインするのが遅れたとか……そう考えると、逆に今さらログイン出来たのは奇跡ね。普通なら意識データが壊れて、それで終わりよ。つまり死ぬってことだけど」


 いや、あんまり怖いこと言わないでもらえませんかね?


「それで堂巡どうめぐりくんは今の状況をどれくらい把握しているの?」


「いやもう、何が何だか……」


 哀川あいかわさんは深く溜息を吐いた。


「ほんっとうにバカね。分析力と理解力、想像力というものがないのかしら」


 いや、想像は出来るけど根拠がないし。知っているなら、素直に教えてもらおうと思っただけですよ。よーしパパ、哀川さんの大事なところを思い出しちゃうぞ。


「深刻なシステムエラーが起きたのよ。学習の為にログインしていた生徒、および管理者全員の脳のデータが破壊され、ほぼ仮死状態となっているわ」


 想像以上の深刻さだった。


「ちょ、待って! それって、笑い事じゃないじゃん!」


「当たり前よ。だから今、外の世界ではシステムを復旧させようと二十四時間態勢で必死の対応が進められている、らしいわ」


「外と連絡は取れるのか……俺のシステムメニューには管理者への連絡機能がなかったから心配しましたよ。でも、それなら一安心かな」


「私のシステムは開発用で特殊なのよ。だから外と連絡が出来るのは私だけ。でも向こうからのメールを受信するだけで、こちらから送信は出来ないけれど」


「え? じゃあ、俺たちがゲームの世界にいるということも、知らないんじゃ?」


「いいえ。データ化された意識がシステム内に残っているのは把握しているみたい。肉体は最新の医療機器を接続し、仮死状態で何とか生かし続けている。だけど、いつまでもつかの保証はないわ」


 俺は冷や汗をかいた。器用な鎧は、しっかりその表面に水滴を浮かべている。


「サーバーの中にある意識データ……つまり私たちね、それを肉体に戻すことが出来れば、生き返ることが可能よ。しかし、その技術が完成するには時間がかかる。最低でもあと一年はかかるでしょうね」


 結局、開発している連中の頑張りに俺たちの命がかかっているってことかよ。俺は叫び出したい気持ちをぐっと抑えた。


「――でも、何で俺たちエグゾディア・エクソダスの中にいるんですか? 俺は学校の授業で――」


「そこよ。面倒なのは」


 はあーと疲れたような溜息を吐くと、哀川さんは詳しい説明を始めた。

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