2-4
――まてよ、
『……皆の者に、いつも通りにお言葉を頂けますでしょうか』
アドラは、さっきそう言った。
いつも通り。
いつも通りの魔王。
そんなの知るわけねえだろ!
――いや、
知っている。
知ってるじゃないか、俺。
知らないはずがない。
だって、ヘルシャフトは、
俺がセリフを考えた。
「キングの名を騙るとはな……考えつく限りの苦痛を与えた後に殺してやる」
俺が声をあてた。
「このグラシャ様がひねり殺してやるぜ」
俺が動きを付けた。
「でもぉ、本物のヘル様はぁ?」
俺こそが!
「拷問して吐かせればいいわ」
――魔王ヘルシャフトだ!!
俺は勢いよく両手を広げた。
それだけの動きで、激しい風と衝撃波が巻き起こった。
「なっ、なにっ!?」
凄まじい衝撃波がホールを駆け抜け、魔物共を吹き飛ばす。俺を取り囲んでいた雑魚の魔物どもが宙を飛び、柱や壁に叩き付けられた。
「なんだこの力……ま、まさか!」
吹き飛ばされながらも何とか衝撃波をこらえたアドラが、慌てた声を上げる。サタナキアも柱につかまり、驚きに目を見開いた。
「この力は、まさしく――」
俺は体をよじり、片手を前に出し、もう片手を顔の前にかざす。
「神が
俺の口から、謳うように、荒ぶる魂の叫びが奏でられる。
自分でも良く分からない、奇妙なポーズを取りながら。
だが、これこそまさしく魔王のキャラクター。このポーズ自体にはまったく意味はない。
されど、これが俺のヘルシャフト。
少なくとも、俺はこんな感じのモーションデータを送っていた。ヘルズドメインの社員で、担当である哀川愁子さんにさんざんリテイクを受けたアクションだ。
そして声。
ヘルシャフトの音声データは――、
「
それは地獄の咆哮。
ホール中の空気が振動し、窓が割れ、壁にヒビが入る。
魂すら揺るがす咆哮に、その場にいる全ての怪物が震え上がった。
アドラたちも、驚きに目を見張る。
「な……これは」
このゲームはまだ開発中。声もまだ仮音声が使われているはずだ。
ならば、俺の声とは、すなわち!
「魔界の王ヘルシャフト!!」
その声が城の全ての部屋に響き渡り、その場にいる全ての魔物を圧倒する。
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