1-5
その爆風の中、力なく吹き飛ばされる朝霧の体があった。完全に力が抜け、まるで人形のように宙を飛ぶ。空中を何回転もして、そのまま地面に叩き付けられた。
それは紛れもなく、俺の剣が付けた傷。
何気ない一振りが朝霧の体を貫き、その衝撃波はあまねく戦場を駆け抜けた。
そんな……。
震える指から剣がこぼれ落ちる。すると剣は再び炎となり、自然とマントに戻った。だが、そんなことはどうでもいい。俺は朝霧の側で膝をつくと、その体を抱き起こそうとして手を止めた。
朝霧が見上げていた。しかしその瞳に光はない。きらきらと輝くつぶらな瞳は、何も映さない濁ったガラス玉のようになっていた。微動だにしないその体に、俺は触れることが出来なかった。
死んだ?
朝霧が。
殺した。
俺が。
「ちがう、違うんだ……こんな、つもりじゃ」
「動きが止まったぞ!
土まみれになりながらも、体を起こした
「サンシャイン・ブレイズ!」
一之宮の剣が炎を上げて振り下ろされる。強烈な衝撃が俺の体を貫いた。
「ぐあぁあっ!」
上体が傾き、景色がぐらりと揺れた。視界に100という数字が浮かんで消えた。
「今だ! 畳みかけるんだ!」
他のクラスメートたちも、跪いた俺の体に容赦のない攻撃を加えてきた。正面から、背中から、頭から、俺はその攻撃を呆然として受け続ける。
再びHPゲージが減り始める。俺は減り続けるHPを他人事のように見つめていた。
どうしたんだよ。朝霧。これはゲームのはずだ。早く目を覚ましてくれよ。生き返らせる魔法とか、あるんだろ?
ああっ、くそ! 誰でもいい、誰か朝霧を助けてくれ! なんとかしろよ神様!
思わず天を仰いだ。
――あれは……?
その時、雲を割り、空の彼方から神々しい光が降り注いだ。
その輝きの中心から白い翼が舞い降りてくる。それは、純白の翼を持つ絶世の美少女。白い肌にふわりとした金色の髪。人間離れした美貌。それはまさに、天が遣わした神の使い。天使の降臨だった。
「……天使」
慈悲と慈愛を湛えた優しい微笑み。その精緻で美しい顔に花を添えるピンクの唇。その花が開き、鈴の音のような声が告げる。
「みんな、死んじゃえ♪」
そして、辺り一帯が神々しい輝きに包まれた。
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