コースメニュー 後編
「で、みんなはそろそろ結婚とか考えていないの?」
アルコールが回り始めて気分が上がってきていた彼女たちが動きを止める。
「……結婚?」
「ハハハ、ナニソレイミワカンナイ」
特に冒険者をしている方は目を点にされて言葉の意味を深く理解出来ていない模様。
「ボ、ボクにはヒロトくんがいるからね!」
「えっ、そうなの!?」
女性陣の視線が皿洗い中の私に集まる。
「違いますよ?」
『なーんだ、いつもの妄想か!』
「ひどいよ!」
さすがに同情を覚えましたが、今のは因果応報ですね。
「同じ冒険者の方とは仲良くされないのですか?」
私もして分かりますが、ギルドは男性が大半を占めているので、ここにいる方は希少な存在なる筈。
それも彼女たちは容姿が整っている方たちばかりで、引く手数多だと思うのですがね。
「いや、あいつらはないわ」
「そうそう、女を酒の席のお供とでも勘違いしてそうだし」
「冒険者とかしている男ってがさつなやつばっかりなのよね」
1度口を開くと雪崩のように男性たちのダメ出しをこれでも口にしていく。
……これも爆弾でしたか。
「ヒロトくんは違うからね!」
「いや、私は元冒険者ですから。それよりレレさんは人気があると聞きましたし、異性から声をかけられるのでは?」
「……気になる?」
照れたようにこちらの反応を伺うので素直に頷いた。
「ダメだよ。レレはギルドにいてもヒロトくんのことしか言わないから」
「ちょ、ちょっと何で言うのよ!」
慌てて相手の口を塞いでいるのは、どうやら私には聞かれたくない内容みたいですね。
「ふふ、それはありがとうございます。皆さん、綺麗な方ばかりですから、早くいいお相手が見つかるといいですね」
そしてあわよくば私のお店で結婚式の二次会とかしていただけるとお互いwin-winですしね。
というかこの世界に二次会とかあるんですかね?
「あっ!団長なら貴族の人と会う機会もあるし、意中の方とかいるんじゃないんですか!?」
「……えっ、私か?」
会話にしていなかったのか、いきなり話しかけられてビクッと団長と呼ばれる人は肩を震わせる。
乾杯のときに挨拶をされていた人で、先ほどまで1人で黙々とワインを呑まれている。
「団長は格好よくて、綺麗ですし、絶対に彼氏とかいますよね?」
「そうそう、女性初のAランク冒険者。孤高のミリア様ですしね!」
いや、孤高って言われてますよ。
それにしてもAランクはすごいですね。冒険者はランク付けされていてF~Sランクと上がっていて、Sランクはギルドの長にしかなれず、自然と冒険者はAランクが一番上になる。
ちなみに私はCランクが最高でした。
「いや、わ、私は日々生きるので精一杯でそのような余裕はないわけで」
……余裕のない人はそんなにお酒を呑むとは思えませんけどね。
彼女だけが、開始してから今に至るまでおよそ1時間半の間飲み続けている。
「まあまあ、少し落ち着かれてデザートでもいかがですか?」
冷蔵庫に冷やして置いたチーズケーキをテーブルに置く。
午前中に作り置きして、今までずっと冷やして置いたので、それなりにおいしいはず。
「うん、これはうまいな!」
団長さんの顔が綻んだのを見て、後ろで小さくガッツポーズをする。
「デザートをいただいているところ申し訳ありませんが、そろそろ飲み放題は終了とさせていただきます」
「こちらこそ、たくさん呑ませてもらってありがとうね」
1人若干飲み足りなさそうな方はいますが、規則は規則ですから、心を鬼にしませんと。
「空いているお皿は片付けさせていただきますね」
「あっ、ヒロトくん。ボクが洗ってあげようか!」
「いや、レレさんはちょっ……お客様ですので」
「もうちょっとうまく隠そうね!!」
レレさんが片付けをすると逆に片付けが増えそうな気がしますし。
それにお客様に手伝っていただくのは私のマナーに反します。
「片付けをするところまで料金に入っていますので」
「やっぱりボクのヒロトくんはすごいね!」
納得していただけは嬉しいですが、近いうちにレレさんのではないと言う事ははっきりしておきませんと。
星空が見える時間までゆったりされていたお客様たちもそろそろ帰路に着くために帰りの支度を済まそうとしていた。
「元冒険者が作る料理ってどうかと思ったけど、君のは何というか繊細で良かったよ。また来させてもらうよ」
「はい!心よりお待ちしています」
ミリア様からお礼をいただいた後も、他のお客様からは概ね好評価をいただけので、飲み放題とコース料理も前向きに検討していきませんとね。
「本日はありがとうございました」
「じゃあ、みんなまた明日ね!」
「……レレさんも帰ってくださいね」
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