こうでもしないと

彼女が小さい頃はよく肩車をした。

プールの帰りや公園で遊び疲れた時などはよくせがまれた。疲れたというよりただ単に肩車をしてもらいたいだけだ。


10歳年下の女の子を肩車することなんて簡単。まだ幼稚園にも行かない子なら。それなら近所の優しいお兄さんで話が終わる。


でも今じゃもう無理。

中学生にもなって肩車をせがんでくる事はないし、それに20歳を越えた大人の男が女子中学生を肩車したら犯罪だ。もう世間を歩けない。


しかし花火大会の途中、はしゃぎ過ぎた彼女は疲れて寝てしまった。

初めての浴衣で嬉しかったのだろう。

仕方なく俺がおぶって帰る。その途中で彼女が肩越しに何かを呟いた。寝言だろうか。


「だってこうでもしないとさ」

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