覚えていた約束

「あの子と付き合うようになったから」


彼が私を呼び止めたかと思ったら、いきなりそんなことを言った。

私は動揺を必死に隠す。


「なんで私に言うのよ」


でも唇の震えは抑えられなかった。


「…約束、守れなくてゴメンな」


私と彼は幼馴染で、幼稚園から高校までずっと一緒だった。だから一緒にいるのが当たり前で、告白することすら忘れていた。

いや、一度だけ彼に告白したことがある。幼稚園のころ、彼とは結婚の約束をしていた。

でもそれは単なるおままごとの延長だと思ってた。覚えてるのは私だけだと思ってた。

でも彼は覚えていてくれた。それだけで満足とは言えないけど、悲しい顔を隠さなくてもいいのは助かった。


「くやしいけど、…いいよ」

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