私の行く手を何かが阻んでいた。まるで大きな山のような、深い谷のような何かが。

これが許されない恋だからだろうか。この愛で傷つく人が必ずいることを知っているからだろうか。

でも私は歩みを止めなかった。


この愛は私にとっても大切なものだから。

他の人の不幸の上に成り立つものだとしても、私にも彼しかないのだから。

どんな罰でも受ける覚悟はもう決まっている。

それは愚者の言い訳かもしれないが、もう後戻りなどできはしない。


そして彼の家にたどり着いき、玄関を開ける。

彼は優しく笑っている。その笑顔は私と一緒に堕ちることを自嘲するかのようだった。

私は黙って家の中に入り玄関を閉じる。


それはまるで炎の中に飛び込むかのように。

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