火、もらっていい?

喫煙所でタバコを吸っていると、女性が一人入ってきた。

深見真穂。たぶん僕より年上。いつもはスカートなのに今日はパンツスーツだ。なにかあったのだろうか。


彼女とはよくの喫煙所で一緒になるけど喋ったことはない。名前も胸元の社員証で知っただけだ。


「ねぇ」


その彼女がいきなり僕に声を掛けてきた。

「火、もらっていい?ライター忘れちゃった」

「あ、はい」と言って僕はライターをズボンのポケットから取り出そうとする。


しかし彼女はいきなり顔を近づけてきた。

前髪を耳にかけて、咥えたタバコを僕の火の着いたタバコの先端に当てる。

僕のタバコから彼女のタバコへと火が移る。


その時の僕は、まるでキスをしているかのようにドキドキした。

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