第二部①『二人の日本人、撤退戦を戦う。』
『二人の日本人、撤退戦を戦う。』第1話
エピローグ
僕は蒼井カズイチ、日本の地方都市に住み工業大学に通う、当時は21歳の学生だった、専攻科目は電子工学、その日も研究室でロボットの自立ブログラムやAIの研究に没頭していたが、バイトに行く途中トラックに跳ねられてしまった、死んだと思ったのに、この世界へ転生してきたのだ。
ヴェレーロ王国それが僕の転生先、一応風の精霊というモノを使役できるだけのチート能力は持って転生したようだ、その後奴隷市場で売られ、奴隷として働き主人の計らいで魔導学校へ入学させてもらった。
魔道学校は国軍の魔道兵団育成校で卒業後はクラスメイトのエドガー・エリザベート嬢が率いる第7遊撃旅団に配属となり隣国への侵攻作戦に従事した。
敵の焦土作戦に物資を吸い取られ疲弊したところを敵の突撃を受け、第7遊撃旅団は壊滅した。
壊走を続けついにエリザベート嬢は敵軍に囚われてしまった、処刑寸前のところで救出部隊が合流を果たし窮地を脱したのであった。
そんな中僕はエリザベートにプロポーズをした。
だが、壊走状態であることに変わりはない、生きて帰るための戦いは続く
第1章『日本人』
エリザベート旅団の救出部隊と合流し、僕らはようやく落ち着きを取り戻した。
救出部隊5000、エリザベート旅団の残存兵力は1000程まで減っていたがまともに戦える兵はほとんど残っていない。
それでもどうにか6000弱の兵力でいまだ敵地のど真ん中に孤立している、高速度の恐ろしく偏った編成で昼夜を問わず行軍してきた部隊はまともな補給物資も持っておらず、更には難民を1000程抱えいまだ状況は芳しくない。
我々は戦地から1日ほどの距離を後退して見晴らしの良い小高い丘に陣地を築いた、傷ついた兵も多くあまり長い距離は移動できない。
ここからジリジリと後退を始め何とかヴェレーロに帰還するしかないということだ。
戦場のど真ん中で派手なプロポーズを行ったが、とにかく本国に帰国しない事には甘い結婚生活など望めないしお互いそういう気分にもなれないのだ。
敵の旅団はほぼ壊滅したが敵国内である限り、十分な兵力は残っている。第2補給部隊を殲滅させた兵力もいまだ我々と本国の間に存在すると予想される。
おそらくは救援部隊をやり過ごし、退路を断ち、疲弊したところで一気に殲滅させる気であろう。
さらに数倍の兵力を一気に投入し殲滅戦に入るのが定石なのだが、今の所敵が動く気配は見せていない。
まだ全滅の報が敵国中枢に届いていないのか?、もしくは勝ち戦の予定であったため、即応部隊は準備していなかったのかもしれない。
今が後退する最大のチャンスではないかと思った。
そんな中、陣地で戦力の再編成を行う事になり、僕は正式にエリザベートの参謀として辞令が降った。
旅団長はエリザベートであるが、実質はエドガー公爵が代表と務める形である。
僕は参謀として始めに亜人の難民に対し一切の暴行を禁止する旨徹底通達したが、ヴェレーロ軍はやはり亜人に差別的な偏見を持っており何とも言えない緊迫感が漂う。
これでは腹に爆弾を抱えているような物だ。
参謀と言っても僕は一介の元大学生、当然そのような仕事は全く経験がなかったので何をしたら良いのか分からない、軍議の席で屈強な軍人相手では発言しづらい状況なのだ。
しかし驚いた事に、比較的柔軟な思考を持つ者が多く僕の意見も大いに採用され、いささか驚きを隠せない、まぁ・・・・エドガー公爵家御息女の婚約者の発言とあっては採用せざるを得ない所であろう。
毎日をあーでもないこうでもないと軍議を重ね方針も未だ定まらない状態だ、26歳と言う若い、軍人でもない男が参謀を務めるのだから意見も定るはずがないのは当然だ。
そんな中、難民の中におかしなヒト族の男が混じっていると兵たちの噂話を耳にした。
何でも聞いたことのない外国語で毎日大声を出して歩き回っているとの事だ。
戦争でおかしくなってしまったのだろうと皆も相手にせず、また亜人と行動を共にするヒト族の男を快く思わないのも確かだ。
僕はそのヒト族の男に興味を持ち、難民の所へ出向いていった。
そこは地獄すら生ぬるい環境だった。
衰弱して横たわる者、中には既に命を落としている者もいた、ハエが飛び回り死体は片付けられず放置したまま、腐敗が進み悪臭を漂わせる死体もある、だがみな気力もなくただうなだれて座り込んでいるだけだ、体力のない子どもや年寄りから次々と脱落してゆく、小型の肉食動物が死体を貪りその動物を捕まえて食料にしている。
何とかしてあげたくても正規の部隊ですら満足な物資もなくギリギリまで食い伸ばしている状態だ、とても難民キャンプの運営まで手が回らない。
僕はその男を探して二日ほど難民キャンプに通った。
いた!何か大声で叫びながら、陣地の周りを歩いている、年は30〜40歳くらいだろうか。
足取りは既に限界のようでフラフラと彷徨っているようだった、雑踏で声が聞き取れなかったが僕は彼の元へと歩を進めた。
「・・・・・だ!」
「お・・・いち・・・だ!!・・かる・・・か?」
風と雑踏で聞き取れないが、僕は彼の言葉にハッとした。
「俺は山下太一だ!言葉がわかる奴は居るか?!」
日本語?!!
日本人なのか!
僕はその男に駆け寄った。
「僕は蒼井カズイチです!日本の方ですか?!」
その男もこちらに気がつき、最後の力を振り絞りこちらへ歩いてくる。
「いた!やはり日本人か!!!」
その男が叫び、そして倒れ込んだ。
かなり衰弱してるようだ、僕はすぐに持っていた水と僅かな食料であるガッデムという名のパンを彼に与える。
彼は夢中で頬張り、そして吐き戻す、あれ?どこか懐かしい光景のような気がするぞ?
そして男は気を失った。
急ぎヒーラーの元へ運ぶ、しかしヒーラー達も精力を使い果たし満足なヒールが受けられない状態だ。
僕は3日ほどつきっきりで看病した、ローディとエレーナにも手伝ってもらった。
その後話を耳にしたエリザベートも彼のテントにやってきた。
「カズイチ、その男はお前の同胞なのか?」
「はい、エリザベートさ・・・そうだよ、エリザベート、僕の同胞だ・・」
「同じ日本人だ」
「ニホンジン?ニホン?・・・はやり聞かぬ国名だな、いったい何処にあるんだ?・・・」
そのようなやり取りをしている最中に男が目を覚ました。
「・・・・・ここは?」
「安心してください太一さん、ここは救護テントです。」
「俺は・・・何日眠っていた?!」
「丸一日程です」
僕がそう答えると、勢いよく起き出し、めまいを起こしてまた倒れた。
「家族が・・・難民の中に家族が居るんだ・・・頼む!君!」
「カズイチです。ご家族ですか?日本の?」
「いや・・俺がこちらに来た時、死にかけた俺を助けてくれた緑の人だ」
「緑の人?ああ、亜人族ですね」
「そうだ、覚えているか?カズイチ君」
「あの時君が心肺蘇生してくれた緑の人の少年を」
「ああ!そう言うこともありましたね!え?あの時の?」
僕は思い出した、雷の精霊でAEDプログラムを組んでる時に心臓マッサージを代わってもらった男、この世界の人間にしては妙に手馴れてるなと思いながら見てたのを。
「あの時の!ご無事で何よりでした!本当に助かりました」
太一もにこりとしながら答えた。
「いや、礼を言うのは私の方だ」
「あの時の少年とその姉が俺の命を救ってくれた、だから君は俺の家族の恩人だ!だが、今はあの時の怪我と栄養不足で衰弱している、今度は俺が助けたい」
太一は強い眼光で訴えかけてくる。
僕はエリザベートの方を向いて懇願するように名を呼んだ。
「エリザベートぉ〜」
呆れたようにエリザベートは言う。
「あ〜分かった、分かったから、そんな目をしないで!」
エリザベートの計らいでミシャと名乗る少年とその姉サラとサラの赤ちゃんが救出された。
ミシャと赤ちゃんは本当に危ない状態であり、あと1日遅れたらどうなっていたか分からない状態だった。
第2章『軍師、山下太一』
さて、状況は全然変わらない、僕は連日慣れない参謀の仕事で頭を悩ませていた、僕は絶対軍人向きではないと思う。とにかく作戦参謀の仕事は分析と作戦立案、そして旅団長が判断するための助言との事だが、逐次変わる数字を基に計画を立てねばならない、しかしこの世界全てが手で集計する、パソコンがないので当たり前だ。
書類を前に頭を悩ませてる所に、回復した山下太一がお礼に来たのはその時だった。
「この前は本当に助かった、ありがとうカズイチ君」
太一は最大級の感謝を込め手を差し出した
「いえ、とんでもない、それより亜人のご一家はお元気ですか?」
僕は握手しながら答えた。
「ああ、おかげで俺は恩人を死なせずに済んだよ、本当にありがとう」
今日はもう一人の恩人のため、お礼に何か手伝える事はないかと思って尋ねてきたんだ、同じ日本人どうし仲良くやろうじゃないか」
太一は屈託のない笑顔で語る、本当に爽やかな人だ。
「はい、お手伝い頂きたくても、今自分がやってる仕事すら要領を得なくて困ってる所なんです。」
「ほぉ?君の仕事・・・・」
と言いかけて太一は机の上に散らかる資料を眺めたて言葉を続けた
「カズイチ君、今君は作戦参謀の仕事をしているのではないか?」
少し驚いたように太一の顔を見上げた。
そして太一は真面目な面持ちになって続けた。
「そう言う事であれば、俺も少しお手伝いができるかもしれんよ」
「え?太一さんは以前何をされてた方ですか?」
僕が不思議そうに尋ねると、かれは親指を立ててこう言った。
「俺かね?俺は・・・・・公務員さ」
公務員か!行政の人間であればそう言う管理や分析は得意かもしれない。何とか彼を登用したいと思った。
「それは良いかもしれませんね!すぐ上司に相談してきますね」
そう言ってエリザベートのテントに駆け込んだ。
エリザベートは着替えの真っ最中であった。顔を真っ赤にし胸元を手で隠し辺りにあったものを投げつける。
「カズイチ!いくら婚約者でもわきまえなさいよね!あんたどれだけ私の裸見れば気が済むの!!?声ぐらいかけなさいよ!」
えっと、学生の時風呂を覗いたの入れたら3回目かなと思い出してる場合ではなかった。
「ごめん!人事の件で旅団長の決済をもらおうかと!!」
テントの外に出て大声で稟議した。
「あなた首席参謀なんだから自分の部下の人事権位持ってるわよ!好きになさい!」
え?えええええ?僕は首席参謀だったの?
僕をそんな高い位に付けてもぶっちゃけ何の役にも立たないと思うんですけど。
「そうか、んじゃ登用したい人物がいるから登用するね」
そう言って自分のテントに戻り太一に正式に辞令を出した。
「それじゃ太一さん、僕の副官と言う事で早速お手伝いと言うよりご指導お願いします!」
太一は苦笑いしながらも快諾してくれた。
「カズイチ君、一つアドバイスをしよう、首席参謀とは要するにエリザベート旅団長が判断する時の材料を提供するのが第一の役目、もう一つは各参謀などの高級士官を監督するのが役目だ、覚えておくと良い」
「もう一つ、俺は君の副官より作戦立案を担当しよう、まぁ君が今まで思っていた作戦参謀にあたる仕事だ、多分その方が俺は役に立つと思うよ」
「いや、正式に辞令を頂いたんだ、よろしくお願いします、カズイチ参謀長殿」
そう言って太一は僕に対し敬礼をした。
この世界では手を額にかざす敬礼は存在しないが、日本では普通よく見る敬礼なので僕も不慣れな敬礼で返した。
太一は早速資料に目を通し始めた。
彼がこの世界に来て2年ほど経過したとの事で、字の方は読む事が出来るようだ。
「ふむ、状況は良くないな・・・とにかく食物がない」
僕も机に座り一緒に考えることにした。
「参謀長殿・・・」
「いや・・・カズイチで良いですよ」
「そう言うわけにはいかん、軍隊は階級社会だそれを蔑ろにしたら組織が崩壊する」
「で、カズイチ参謀長、斥候は出せるのですか?」
太一の質問に対し、僕は同じ日本人のよしみで精霊魔法のからくりと今までの応用を詳細に伝えた。
まぁ、元公務員じゃ専門外だと思うからわかるわけないだろうけど。
「ああ、この世界の魔道探知はそう言う理屈か、アクティブで打って相手の魔力を探知するんだな、それで地平線の向こうや山陰は探知できないと・・・」
太一さん詳しいじゃないですか、ただの公務員とは思えない。
「で、カズイチ参謀長殿が編み出したのが上空でそれをパッシブ受信する方法ね・・・必要に応じてアクティブでピンを打つか・・・良い感じのルックダウンレーダーですな」
「そう言う事ならわざわざ報告に時間のかかる斥候を出さなくて済みますな」
「それじゃ、こうしましょう、風の精霊を4匹背向かいで配置して90度ずつ受け持ってもらいましょう、そうすれば一度に360度、ラグなしで警戒できる。」
あ、その手があった!僕は盲点を突かれて感心した。
「フェーズドアレイレーダーと言う訳ですね」
フェーズドアレイレーダーとは海上自衛隊のイージス艦で使われているレーダーシステムで、全方位を一度に監視できる、回転式のレーダではアンテナが回る方向しかスキャンできず、一周回ってくる頃には、音速の2倍以上で飛来するミサイルの接近を許してしまうのだ、よって全方向同時にスキャンして高速で飛来する物体もしっかりトレースできると言う優れものである
「ほう、参謀長殿はお詳しくていらっしゃる、こちらも助かりますよ。」
そして、太一はニヤリと笑って言った。
「それにしても腹が減りましたなぁ、敵さんの飯を分捕って食っちゃいましょうか!」
え?そんな事できるの?僕は一瞬パニックになった。
「太一さんそれって、どういう事なんですか?」
「我々には、日本の科学ってぇ奴があります、こっちの科学技術とは桁違いの奴がね、当然そういうものは敵さんの勘定に入っていない、それが我々の強みでもありますな」
「聞けばそれを、参謀長殿は戦術レベルでお使いになられた、今度はそれを戦略レベルで使えば良いんですよ。」
「こう言う古い時代の戦争はお互い目隠しした状態で出陣します、斥候を繰り出して探りを入れつつ先に相手を見つけ、有利な所に陣を張ったり待ち伏せしたりする訳ですが、我々は神の目線で戦う事ができます、これは大きなアドバンテージだ」
「言うなれば第二次大戦の艦隊戦みたいなモノですな、昔は索敵機を飛ばして敵を探しましたが、もっとも現代では偵察衛星を使って相手の居場所は既に感知できてしまいますからもっと難しくなるんですけどね」
なるほどと僕は納得した、いやぁ良い人材を手に入れた、しかも重要なナイショ話は日本語で行えば良いので色々と助かる。
「それで、太一さんはどんな手で相手の物資を分捕るんですか?」
「とりあえず敵を探して、その規模と配置を探りましょう、5パターンほどシナリオは考えましたので、状況に応じて使っていきます。」
早速風の精霊持ちを集め作戦の説明にあたろうとするが、僕の作る呪文は彼らにとってオーバーテクノロジー的なもの、考え方の根本からして違うので、理解できるものは居なかった。
悩んだ挙句、僕は呪文ををスクロールに書き直接精霊に読ませて命令する方式を取ったのだ。これによって誰でも精霊に音波を送受信させられる事になる。
スクロールの複製がすごく大変でしたが。
ようやく人数分のスクロールを完成させ、魔道兵団の皆に配った。
精霊そのものはちゃんと学習できるので何度か使わせているうちに、ルーチンを呼び出す程度の呪文でそれが使えるようになる。
精霊たちは同じ命令を受ける者同士ネットワークのような物を形成し、同じ事を繰り返せばどんどん強化されていく、まるでAIのようだ。
第3章『戦場のハイエナ』
太一がテーブルに片手をついてニヤリと不敵な笑みをこぼしながら言う。
「それでは参謀長殿、この陣地を中心に15度ずつ索敵機を飛ばして下さい、範囲は歩兵が進出し戦闘が可能な距離、約30kmって所ですな」
「索敵機ですか?」
「ええ、風の精霊とやらをアクティブ状態にして地形と敵をスキャンさせて下さい。」
僕は怪訝そうな顔でたずねる、それはそうだアクティブで飛ばしたら敵の魔道探知に引っかかってしまうからだ。
「アクティブで良いんですか?見つかっちゃいますよ?」
太一はにっこりと微笑んで答えた。
「敵さんには索敵機を見つけて欲しいのです、それとついでにその情報を元に詳細な地図を作成します。地図は作戦上重要なものとなるでしょう。」
「わかりました、直ちに準備します」
そうカズイチが答えると
「逆ですよ、カズイチ参謀長、そこは一旦旅団長に申し出て承認してもらうのです、承認が下りたら私に『直ちに準備せよ』と言うのがあなたの仕事です。」
軍隊の事はよく分からないが、太一のこともよく分からない公務員とはそういう組織なんだろうなと思いながら、エリザベートの許可を取付けに彼女の天幕に向かった。
「エリザベート!作戦の承認をもらいたいんだ!」
勢いよく幕をめくると、エリザベートはまたしても着替えの最中だった。
「カ〜ズ〜イ〜チィ〜〜!あなた絶対わざとでしょ!?狙ってやってるでしょ!?」
色んな物が手当たり次第飛んでくる。
「夫になる人に裸見られた位でそんな怒らなくてもいいだろぉ〜地味にショックだよ!!」
エリザベートは涙をいっぱい浮かべて予想外の答えを僕にぶつけて来た
「こんな所じゃなくて、ちゃんと一番綺麗な時に見て欲しいのよっ!こんな汗臭くて水浴びもできなくて、そんなの嫌なの!わかってよ!」
それは道理である。ついこの前敵兵によって危うく慰み者になりかけて、不本意ながらも好きな人より先にその肌に触れられてしまったのだ、しばらくはそう言うのは恐怖でしかないだろうな・・・・
「ごめん、エリザベート・・・僕が悪かった」
着替えを済ませたエリザベートに作戦の説明をした。
終始彼女は自分の服をクンクンと匂ってとても気にしてるようである
それを見ていると、とにかくこんな環境から1日でも早く彼女を救ってあげたい、そう言う気持ちにさせられた。
行こう!戦おう・・・僕は彼女の笑顔が見たいんだ・・・そう決心した。
エリザベート旅団長の承認を受けた僕らは早速準備に取り掛かる。
魔道兵団の中から24名の風精霊使いが招集され、太一は作戦の詳細を説明した、もちろん彼らにそんなプログラムは組めるはずが無かったがそこは手書きの呪文書を精霊に渡し、実行させたのだった。
魔道士達はその呪文を理解する事は出来なかった、精霊語による二進数記述でヴェレーロ語には翻訳されてなかったからである。
30kmなど精霊を飛ばせば小一時間と言う距離だ。
かくて、24体の精霊達は受け持ったそれぞれの方向に飛び立っていった。
作戦の最終目標は敵物資の強奪である、その方針さえ示せばあとは各部隊の指揮官に指示するだけで良いのだと太一は言う。
「太一さん、公務員って・・・どんな仕事内容だったんですか?」
「あ?ぁぁ・・・陸上自衛隊の幕僚監部って所の教育訓練部って部署で働いてたんだよ。」
「え?ええええええ!!本職じゃないですか!」
「そ・・そうかな?」
「じゃぁ防衛大学出身ですか?」
「まぁ、成績は普通だったけどね」
僕は思わぬ人材に腰を抜かしそうになった、こんな工業大学を中途で死んで卒業もできてない僕に比べたら、本当にこの旅団に必要な人材である。
むしろ首席参謀は太一さんでよくね?と思ってしまう位だ。
程なくして北西方向に飛ばした精霊から感ありの報告が入った。
太一はその周辺に飛ばした精霊の情報を元に地図を作り上げ、敵の位置や配置を書き込んで行く。
太一は地図と敵の配置を見ながら僕に説明するような独り言を行った
「ふむ、ここから北東に40kmほど行った所に左右を山で囲まれた盆地状の地形・・・・その中に街道が二つ真ん中に川か・・・で出口付近の隘路で防御陣を組んでいる。敵の数はおよそ1000、連隊規模だな」
「どういうことですか?」
ぼくが尋ねると太一は生徒に講義をするような口調で言った。
「一応この世界の軍隊もセオリーはしっかりしてるって事さ。こういう場合は隘路の外で防御陣を組んで盆地に斥候を送り偵察部隊を出して探りを入れながら進むのが上策だ。」
「なぜ隘路の外なのですか?」
「ん〜敵が進行してくる街道は2本ある、部隊はその2本の街道を使って進行してくるだろ?盆地の中に陣を引けば二方向から攻撃を受けて戦力がバラける。だが隘路の外側だと2部隊が合流する地点に攻撃を加えれば、大混雑して敵はうまく部隊を展開できない、連隊規模ならなおさらだ、だからその位置で防衛陣を築けば戦況を有利に展開できるんだよ」
「なるほど・・・・」
僕はよく理解できない状態で相づちをうつ。
「そこでだ!カズイチ参謀長殿、我々は全軍上げて反対側の隘路に輪形陣を組む。そこで、この場合我々が取る行動は、積極攻勢か?それとも遅滞行動か?どっちだと思う?」
僕は直感で答えた。
「積極攻勢ですね」
太一は鼻からため息を漏らし、僕に落第点を付けた。
「残念!僕らの目的は物資の強奪だ、そのうえ積極攻勢に出るだけの火力を持ち合わせていないし腹が減って数ほどの働きができない、しかし数だけは敵の6倍だ・・・我々の数を知れば当然敵さん退却の一手になるだろう、つまり物資は手に入らない。」
「は・・はぁ・・・」
「だから、敵に停滞を促すように、小部隊で嫌がらせをしつつ、全体数の把握を遅らせて、そこに止まるように仕向けなければならない。」
「そこでカズイチ参謀長には別働隊として一個中隊200名程を率いて山中を行軍し敵の側面に付いてもらいたい」
「作れるんだろ?低酸素状態を?」
その言葉を聞いて僕はピンときた。鼻息荒く正解と思われる発言をする。
「敵の輪形陣地を低酸素状態にして一気に殲滅し物資を丸ごといただくのですね!」
また太一は鼻からため息を漏らして、僕の回答に不可を付けた。
「殲滅してもらっちゃ困る。」
「は?なぜですか?」
「低酸素状態で敵の動きを止める、ここまでは正解だが、敵さんには生きててもらわないと困るんだ」
「しかし、気がついたら一気に攻勢に出てくるのでは?」
授業の続きとばかりに顎に手を当て、太一が答える。
「ん〜今我々は食物が無くて6000弱と言う兵力を数どおりの働きをさせられないだろ?忌々しい限りだ、敵も食わなければ攻勢どころの騒ぎじゃない、食物の無くなった敵さんは一旦駐屯地まで下がって再補給を受けるか、手近な部隊と合流して食物を折半しないといけない、だが殲滅させれば新しい元気な部隊がどんどん出てきて手に負えなくなるだろ?」
「そ・・そうですね」
「だから、退路を塞ぐ敵以外は今回は殲滅させずに、自国内を食物求めてウロウロ彷徨ってもらわにゃならん。そうして敵の部隊が使い物にならなず、味方の物資を食いつぶすうちに我々は腹一杯食って、そそくさと逃げ出さねばならんわけさ。近くに味方部隊がない場合は手近な村々から物資を徴用せねばならん、そうなったら住民感情も悪くなり、後日再侵攻させられた時に、いろいろと布石になってくるのさ」
僕は全身総毛立った、これがプロの戦い方・・・戦術と戦略なんだと。
「我々は、まるで戦場のハイエナですね」
僕がそう言うと、太一もニヤニヤしながら答えた。
「いいね、それ!イタダキだ!大いに結構!以後この作戦を『戦場のハイエナ作戦』と呼称しましょう!」
こうして戦場のハイエナ作戦は開始された。
第4章『傷だらけの旅団』
エリザベート旅団は早速盆地の反対側にある隘路にて輪形陣を組み全方向への警戒及び防御を固め地味に斥候と威力偵察部隊を繰り出し小競り合いを開始した。
敵の情報は風精霊の索敵のおかげで丸見えだ、敵の繰り出す偵察隊はことごとく殲滅させられて行った。
こちらの数を把握できない敵は、ますます強固な防衛陣を張り遅滞行動に出たのだ。
「小競り合いの規模からみて、おそらく敵さんは同程度の兵力と推測したみたいですね、撤退せずにキッチリ引き篭もってくれましたよ、うまく引っかかってくれて助かりました。」
太一は安堵したようにキセルに刻みタバコを詰め込むとおもむろに火をつけけた、ぷはぁ〜っと紫煙を燻らせ、苦々しい表情を浮かべた。
「しっかし・・・この世界のタバコはマズイなぁ・・・」
タバコを吸わない僕にとっては何ともコメントしづらい問いかけだ。
しかし見事な心理誘導であると僕は感心せずには居られなかった。
1日遅れたらその分物資は減る、僕の率いる中隊はとにかく急がねばならなかった。
その日の午後ようやく敵を射程に収めた、中隊の中の一個小隊は風使いの魔道兵だ、彼らの精霊を使い緻密な範囲固定を行いその中の酸素濃度を一気に6%まで引き下げる。
あの時の光景が目に浮かぶ、音も光も匂いも無く静かに敵兵は崩れて行った。
一気に敵陣になだれ込むも動く物は何一つない。僕らの中隊は一人の犠牲も出すこと無く、敵物資の全てを強奪することに成功したのだ。
倒れている馬はその場で解体して肉としてして持ち帰る。
帰りは盆地内の街道を通って悠々と引き上げてこれたのだ、陣地に戻ると兵たちは歓喜の声で我々を出迎えた、強奪した物資を配分し腹を満たしたエリザベート旅団は翌日には戦域より幻のように離脱し次の獲物を探しつつ撤退を開始したのである。
追跡させた精霊の報告によると、回復した敵兵達は反対方向へ撤退を開始したとの事であった、とりあえずは目の前の脅威は去ったのである。
この作戦を数回繰り返すと、6000弱の兵と700まで減った難民たちの腹を満たす程には物資が集まったのである、逆に敵兵は飢えて自国内をさまよい始めた。
途中寄った集落でも、惜しげもなく物資を提供した。自国兵に散々搾取されていた彼らは喜び、道案内を出したり、抜け道を教えてくれたりと我々に対しても友好的で協力的な態度で接して来たのだ。
恐るべしは山下太一の戦略眼である、彼は物資の強奪を繰り返すごとに兵士達からの信頼を得て今ではエリザベート旅団随一の知将として崇められている、それに傲ること無く太一は淡々と作戦を練り上げ一歩一歩とヴェレーロへの帰還を手助けして行った。
傷だらけのエリザベート旅団、編成も偏り扱いにくい構成であるにもかかわらず、組織の再編を行い・・・・正確に言うと自衛隊方式の部隊編成に塗り替えて行った。彼いはく
「だって、その方が僕にとっては扱いやすいんだよ」
と、ニヤニヤしながら語った。
流石は自衛隊出身である、難民に対しても非常に友好的に接し亜人族の間でもタイチ・ヤマシタの名は崇める対象として広がっていったのだ、コミュニケーションがうまく取れれば兵士達の彼らに対する差別的な態度も薄れて行って、中には亜人族と恋仲に落ちるものまで出る始末だ。
ヒト種と亜人種のカップルを見ながら僕は太一に尋ねた。
「ねぇ、太一さん・・・・遺伝子情報が違う彼らに2世代目って生まれるんですかね・・・・」
太一は憮然として答えた。
「戦争屋の僕にそう言うの聞かないで下さい参謀長・・・・あなたの方がそう言う知識はおありでしょ?でもその知識のおかげで僕の戦略の幅が広がって大助かりなんですよ。」
「それなら僕もなんとか立場が保てますよ、それにしても・・・交配可能としたら、いったい何色の肌が生まれるんだろうな・・・」
僕はぼそりと呟いたら太一がタバコを吹かしながら答えた。
「薄緑色っすよ・・・・」
「え?」
相変わらずニヤニヤと太一は答える。
実は子どもができるか出来ないかそれは太一が一番知っている事であった。
ミシャとサラに助けられて家族同然に暮らした彼は既にサラと夫婦になっていたからである。
我々エリザベート旅団はヴェレーロ国境まであと2週間と言う位置までなんとか下がることができた。
ここからは部隊を半分に割くと太一は言う。
「いくら国境に近いからって、戦力の分散ってマズくないですか?」
一応参謀長としての意見を述べてみた。
太一は作戦立案する際、相手の意見は全て否定しない、判断材料と様々な角度から分析するための意見として受け入れるのであった、
「もちろん分散のリスクはありますよ、でもここらでエドガー公爵や戦闘に向かない人たちは一気にヴェレーロに帰還してもらう、エドガー公爵が帰還すれば援軍と補給物資を確保しやすくなる、そのためには十分な火力兵力で護衛して後に備えるつもりです。」
「我々には敵を遥かに凌駕する目と耳がある、これだけでも無駄な戦闘を避けながら帰還することは十分に可能です、その場合動きやすくて軽い部隊編成の方が有利なんですよ」
相変わらず素晴らしい見識だと感心する。
「それに、参謀長殿にはだいぶ講義をして来ましたからね、結構いい線いってますよ、もし日本に帰還できたら陸上自衛隊に入りませんか?歓迎しますよ?」
帰れたらいいなぁ・・・と思う反面、エリザベートを残しては行けない、僕はこの世界で生きてこの世界で死ぬ、そう言いかけて口を閉じた。
「覚悟の決まった良い目をしてますよ、カズイチ参謀長殿・・・・」
それを察したのか、太一は煙を吐き出しながら笑った。
ーーーーもうすぐ・・・もうすぐ帰れるんだ。
そう心の中で何度もつぶやいた。
翌朝作戦の旨エドガー公爵に伝えると渋りながらも受諾された。
娘を戦場に残して帰還など感情が許さなかったが、作戦の合理性にも納得せざるを得なかったからだ。
ローディ、エレーナにも帰還命令を出した。今では僕の方が上官だ、そしてエリザベートにも父と共に帰還するように打診したのだ。
エリザベートは酷く怒り僕に詰め寄った。
「嫌よ!嫌!わたくし絶対に帰りませんことよ!カズイチは私が邪魔になったというのかしら!」
「そうじゃ無いよエリー」
いつの間にか僕は彼女を愛称で呼ぶようになっていた。
「離れるのは嫌なの・・・カズイチ・・・あなたにもしもの事があったら私・・・」
エリザベートをぎゅっと抱きしめて温もりを感じながら、肩を抱きそっと引き離す。
「エリー、愛してる、君が大好きだ。だからこんな危険な場所に居てはいけないんだ。僕には太一さんがついている、必ず生還するよだからお願いだ、言うことを聞いてくれ」
そう言ってそっとキスしようとした。
しかしそのキスをエリザベートは拒み泣きながら言った。
「あの時カズイチに命じたわ!朝も昼も夜もベッドで眠る時も私の元を離れることは許さないと!そう命じたわよね?」
「ああ、命じられたとも、僕は君の元を離れないよ、でも君を万が一の事態に巻き込んで命を落とすことになったら僕はずっと後悔する、だからお願いだ僕のわがままを聞いてくれないか?」
「死ぬならあなたの側がいい!この身が打ち捨てられ、醜く腐り果ててもカズイチと一緒ならそれが良い!もう嫌なの!あの時みたいに一人で不安でどうしようもなくて!毎日声を殺して泣いて!またあんな思いをする位ならカズイチとこの地で死ぬ!」
手を添えた肩を小刻みに震わせながら、エリザベートは僕の胸で泣いた。
ものすごく、部隊のど真ん中で、お父さんやローディ達が見てる真ん前で。
ヒソヒソ
「泣かせた!」
「カズイチが旅団長を泣かせた」
「最悪な男よ!」
「悪魔だわ!」
「ワレラ亜人族、あんなことしない・・・」
周りからもヒソヒソと悪役になった僕への罵声が小さな声で浴びせられる。
エドガー公爵に目で合図を送って何とかして下さいと懇願した。
「わしの娘を泣かせたな?カズイチよ・・・」
「ちょ!待ってくださいお父さん!」
僕はエドガーお父さんのグーパンチを覚悟したが意外な答えが返ってきた。
「こんな状況に娘を残して行くのは絶対に許せん!しかし・・・わしの娘を泣かすのはもっと許せん」
「え?」
「カズイチ、娘がお前と死にたいと言っている、離れる位なら死ぬと」
「もしここで娘を死なせたらワシは貴様を一生許さない、しかしこんなにもお前と一緒にいたがってる娘を引き離すのは忍びないのじゃ・・・」
「もうエリザベートもこの年齢になったら立派な大人ぢゃ、ワシは目を離す決心ができた。好きな男の側で死ぬというのが本望なら、それでいい、だが、心だけは離さぬ、父はいつもお前を想っておるぞ、エリザベートよ」
「必ず援軍と補給物資を持って戻って来る、それまで死ぬでないぞ!」
「お・・・お父様!」
エリザベートは僕の手を振り払い父親に抱きついて大泣きした。
ヒソヒソ
「ぉぉ!美しい親子愛だ!」
「何て素晴らしい光景なのかしら」
「公爵様はやはり大人物でいらっしゃる」
「エリザベート様もお美しい」
「カズイチのような野良犬に食われるとは・・・口惜しや」
なんですか?その温度差は?
僕が泣かすと悪魔扱いで、公爵なら良いわけ?
しかも今野良犬とか聞こえましたけどぉ〜〜〜!!
その光景をニヤニヤと笑いながら太一は眺めていた
最愛の妻サラの肩を抱き傍にその弟、そしてサラの腕には薄緑の肌をもつ小さな女の子が指をくわえて笑っている
太一が一段と大きな声で割って入った。
「俺は死ぬ気は無いよ?部隊もそして難民も必ず生還させる、その時はエドガー公爵様、亜人に対する差別的な考えを自ら正して、民の範としていただきたい、お約束いただけるなら、私は全力でこの部隊を守ります」
「国境近くに亜人特区をお作りいただき、対等に交易を結んでいただけますか?」
その問いにエドガー公爵は目を細めて言った。
「知将タイチ・ヤマシタよ、そなたらを見ていたらワシも心洗われる、家族を想う気持ちに人も亜人も無いとな、そしてその薄緑の肌の子よ、人と亜人の可能性を見ることができた、約束しよう、必ずや卿の功績に報いよう、エドガー公爵の名を持って宣言する!」
それを聞いた太一はサラと子を見つめながら優しい微笑みで言った
「タバコ・・・やめようかな・・・・」
翌日の早朝、準備の整ったエドガー部隊は3500の元気な兵を連れてヴェレーロ本国へと後退していった。我々に残された兵力は2000と亜人の難民が700程である。だが亜人の中からも知将タイチを崇める者が200名ほど戦列に加わったのだ。
編成を済ませたタイチはタバコ代わりにハーブの葉を噛みながら苦々しい表情を浮かべカズイチに呟いた。
「ん、独立混成2個連隊もあれば何とかなるだろう、カズイチ参謀長殿、頑張って生き残ろう!」
「はい、太一さん絶対に生きて帰りたいです!」
薄暮の中、薄紫に変わりゆく空をながめて僕らは固く握手をした。
エドガー隊にはたっぷりと風精霊を配置した、敵に見つかる事なく本国へ辿りつけるだろう。
そして我々は第2補給隊を殲滅させ旅団が壊走してくるのを今か今かと待ちわびている敵の一個師団をおよそ1日程の距離で補足したのだった、比嘉の兵力比は4:1、エドガー隊を確実に逃すにはこれと対峙する必要があったのだ。
エドガー公爵隊が援軍に戻って来るまで早くても一月はかかるだろう。
太一は少し固い表情でカズイチに言った。
「参謀長殿、これからの作戦はあなた頼みだ・・・・一旦参謀職から降りてはもらえないだろうか?」
「それは構いませんが僕は何をすれば良いのですか?」
「君には一個中隊およそ200名を率いて自由に動いてもらいたい」
「僕がですか?」
「そうだ、君には日本で言う特殊作戦群を率いてもらい敵の思わぬところから思わぬ攻撃をしかけてもらいたいんだ、その科学や物理の知識をフルに生かして・・・・人選は任せます、必要と思える人たちを2日で選んでください、もちろん婚約者を連れて行っても良いですよ」
そして今度は日本語で続けた、日本語で話す時は最高機密事項の話をする時だとの二人の決め事なのだ。
「この世界にあなたの知識を置いてはいけません」
「敵に真似されるからですか?」
「いや・・・ヴェレーロ国軍に真似される事の方が厄介なんだ」
僕はその理由を瞬時に理解できた
「あ・・・あああ・・・そういう他国より有利な力をもつと使ってみたくなるってヤツですね。軍事均衡が崩れて、いたずらに各地で戦争を引き起こすと・・・」
太一は満足そうにニヤリと笑って続けた。
「さすが、僕の授業を一番近くで受けただけはあります、その通りです」
「その為の特殊作戦群なのです、今やあなたは敵中に孤立した軍事機密のカタマリなんですよ、攻撃もできるだけ味方に理解出来ないような手法でお願いします、種明かしは厳禁ですよ。」
「わかりました、それでは今から僕はあなたの指揮下に入り特殊作戦群を率います、やっとこれで本来あるべきポジションで戦えるという事ですね」
こうして僕らは4倍の敵と対峙する事になった。
未だ敵国領内で明日をも知れぬ僕たちに生きて帰れる術はあるのだろうか?不安はあるが必ずエリザベートと共に生きて帰る決心をした。
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