第12話
授業なんて忘れてサボってしまおうと校庭へ訪れるとなぜか彼がいた。
『授業始まっちゃうよ?』
『雨宮さんこそ』
珍しくにこやかに笑った彼はこちらを振り向くことなく花壇の土を作っている。
『またおせっかいしてきたの?』
『おせっかい?』
『春川君に会ってきたんじゃないの?』
『そう…だけど…。』
『もうそろそろ辞めたら?そのおせっかい』
『どういう意味?』
『いつか本当におせっかいで終わっちゃうよ。いいお友達より上の関係を望むんだったら。…雨宮さんは頭がいいからわかるよね?』
『…。』
『大切なものを裏切ってまで手に入れたくはない…?』
『…。』
『だって雨宮さん苦しそうだよ。他人は楽になって雨宮さんが苦しくなるなんておかしいよ…。もう、終わりにしよう?』
『終わりにしたら…、私が今まで築いてきた何もかもがなくなっちゃうよ。』
『なくならないよ。少なくとも僕からは失くさない。』
『…瑞雪くんに言われる前からね。気付いてた。ああ、私何やってるんだろうって、苦しいな、悲しいなって。でも、お友達が泣いてるのはもっと悲しいなって思った。そうか、私は樹ちゃんとの関係がなくなるのが怖いんだって。春川君のことは好き、でも、それに負けないくらい樹ちゃんのことも好きだから…。』
『そっか…もういいよ…。ごめん…』
いつの間にあふれ出した言葉は、涙は、早々に去ってくれるものではなくて、とめどなく流れるその涙をすくう手と、震える体を包み込む腕が、心に染み込むような暖かさと熱を残した
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