第2話

『も~~!!』


『どうしたの樹ちゃん…?』


真っ先に声をかけてきてくれるこの美人さんは花ちゃん一年生の頃から私の面倒を見てくれる私の大切な友達。


『花ちゃあん!!聞いてよ!私が20分も掛けて髪の毛セットしてきてるのに変わらないとかいうんだよ?!ゆう君ひどすぎる!!』


『今日も仲良く来たんだ』


『仲良くないよ!!も~!!裏庭行ってくる!!』


『ええ!!もう15分でHR始まるよ?』


『大丈夫!ここちゃん見てくるだけだから!すぐに戻ってくる!』


こんなむしゃくしゃする朝は決まって裏庭に行ってここちゃんの様子を見に行くのがストレス解消法になって来ている


―――――――――――――――――――――――――――――――――


『ここちゃーん!』


そう何度呼んでみてもいつもみたいに姿を現してはくれなかった


チリン


と鈴の音がする方へ歩を進ませた。


『ここちゃーん…?』


曲がり角を過ぎると金髪の男の子がしゃがんでいた。


彼の影からは尻尾が見え隠れしていた


もしかして!!!そう思い精一杯の根性を振り絞って彼に話しかけることにした


『あの!!!!その子っ!!うちの猫で!!!あのっ!!!』


まったくもって意味を持たないその言葉に振り向いた彼の後ろにいたのはおいしそうに猫缶を頬張る猫の姿だった


『へ?』


『え…?』


こちらを振り向いたまま固まる彼に深々と頭を下げた


『す……すみません……』


『いいよ、こんな髪色してればそりゃいじめてるんじゃないかって勘違いするだろうし』


ご飯を食べ終わった猫が彼の手に頬を擦りよせる


『おいしかった?』


そう言って優しく撫でている仕草がなんだか似合わなくて少し笑ってしまった


『この子、胸のあたりにハートマークがあるんです、だから心ちゃん、私はここちゃんって呼んでるんです』


『心…』


『飼い猫なのにいっつも呼ぶときてくれてとってもいい子なんです』


『猫、好きなの?』


『はいっ!あ、猫だけじゃなくてちっちゃい動物が好きです、可愛いから』


楽しい時間は早く過ぎ去ってしまうもので裏庭にも静かにチャイムの音がこだました

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